大野ロベルトさんの連載映画評論『七色幻燈』『第二十八回 それは役に立つのか』をアップしましたぁ。巨匠アンジェイ・ワイダ監督の遺作『残像』を取り上げておられます。神田の岩波ホールでの上映でしたね。最近岩波ホールに行ってないなぁ。ポピュラリティのある話題作は上映されませんが、世界中から芸術性の高い映画を選んで上映している映画館です。
ワイダ監督を生んだポーランドはずっと外国の侵略に悩まされてきました。第一次世界大戦では隣の大国ドイツに併合されたわけですが、二次大戦でドイツが分断されると、今度はソビエトによって実質的な衛星支配国にされてしまった。ただ古代ポーランド王国以来、民族意識の強いエリアです。中世には分断国家になりますが、様々な芸術が花開いた宮廷文化を持っていました。自由な社会と芸術的豊かさを知っている民族国家だったわけで、だからこそワイダ監督が描いたような抵抗運動も起こったのです。ワイダ監督が『残像』で描いた前衛画家ストゥシェミンスキもソ連の抑圧に屈しなかった芸術家の一人です。
大野さんはヴォルフガング・ベッカー監督の『グッバイ、レーニン!』にも触れておられますが、ソ連の衛星国になったとはいえその内実は国ごとに違います。もちろんヨーロッパ人ではないので細かい襞まではわかりませんが、映画などを見る限りで言えば、ポーランド人は従順なようでいて頑固。ドイツ人は意外としなやかで、共産国家から資本主義国家へとなんなく移行したような感じです。いずれにせよ現在に至るまで、数々の変遷を経てなおも民族・宗教ごとに国家があり国境線があるのは、それぞれのエリア独自のアイデンティティがあるからです。映画はそういったアイデンティティを知るための、生きた良き教材にもなり得るでしょうね。
■ 大野ロベルト 連載映画評論 『七色幻燈』『第二十八回 それは役に立つのか』 ■
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