大野ロベルトさんの連載映画評論『七色幻燈』『第二十六回 青息吐息は桃色吐息』をアップしましたぁ。スパイク・ジョーンズ監督の『her/世界でひとつの彼女』を取り上げておられます。大野さんは現代人について、『〈僕〉は雑誌に出ているようなアパートで雑誌に出ているような家具調度に囲まれ、雑誌に出ているような服を選び、つまり「正しい」生活を送っているが、心は一向に満たされない。豊かな生活とは裏腹に貧しい人間関係にあえぎ、孤独を切望しているくせに悲観的になり、他人を拒絶するくせに理解されないと嘆く』と書いておられます。まあ現代人の典型的な姿でしょうね。
このいわゆる〝ないものねだりのテーマ〟は、映画に限らず文学でもけっこう作品として表現されています。大別すればテーマの表現方法は二つ。一つは〝絶望〟に向かうこと。もう一つは〝希望〟に向かう。エンタメ作品ならどっちでもいいわけですが、もち〝希望〟の方が人気があります。わざわざお金を払ってエンタメのために絶望を見たい、読みたいという人は、あまり多くないですからね。
ただ見た、読んだ瞬間はそれなりに楽しめても、多くの人が『なんか違うなー』と感じることが多いのも確かです。現代人の〝ないものねだりのテーマ〟は、一皮剥くとすんごく傲慢なところがあるんです。自己中な被害者意識も他力本願的な救済も、その傲慢さの前には嘘くさくなってしまう。人間、脆いですが、意外なほど強くもある。はっきりとしたテーマがあり、ありきたりの落としどころに作品をはめ込みたくなかったら、底の底まで考える必要があります。
■ 大野ロベルト 連載映画評論 『七色幻燈』『第二十六回 青息吐息は桃色吐息』 ■
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