原作・小原眞紀子、作・露津まりいさんの連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第23回)をアップしました。第12章『荒熱を冷まし、焦げはこそぎ落とす』(後編)です。ラストに向かって凪の状態になった章という感じです。
『お菓子な殺意』は書店流通ジャンル的にはサスペンス小説になるわけですが、石川は小説は基本的にサスペンスぢゃないかと思っています。作家があるとき、なんとか解きたい、解決の糸口を見出したい問題を抱える。だけど論理では解消できそうにない。そういった場合に複数の登場人物と現実そっくりの時空間を設定し、事件などを起こして登場人物同士、あるいは登場人物と社会を戦わせて糸口を見出そうとするのだと思います。つまり作家が謎を抱えていないと小説文学は強くならない。
カフカという作家がいますね。20世紀前衛文学を代表する作家ですが、彼の作品は意外と面白い。謎解きの要素があります。つまり作家が謎=思想を抱えていて、それをなんとか解こうとするから読者が飽きずに小説についてゆく。カフカ〝的〟小説という言い方がありますが、少なくとも作家に強い謎=思想がなければ、〝的〟などという言い方は文体の模倣に過ぎません。カフカチックでも魅力のある作品にはならない。当たり前のことですね。
純文学小説は能書きが多い割にはつまらない作品が多いと思います。現代詩と呼ばれる自由詩作品も同じ。基本に立ち返るべきですね。読者は面白いと感じる作品でなければ読まない。面白さにはもちろんいろんな種類がありますが、純文学の場合はわたしたちの生の根幹に直結したシリアスな問題です。それを抱えていなければ純文学作家は形式をなぞる空虚になってしまう。
サスペンス小説も純文学になり得る、というより、純文学の基礎要素だと石川は思います。読者を獲得した作家として書いて本を出してゆきたいなら、文壇や詩壇での出世に惑わされず、文学をもっと基本的な認識で捉える必要があります。
■ 小原眞紀子・原作 露津まりい・作 連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第23回) 第12章『荒熱を冷まし、焦げはこそぎ落とす』(後編)縦書版 ■
■ 小原眞紀子・原作 露津まりい・作 連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第23回) 第12章『荒熱を冷まし、焦げはこそぎ落とす』(後編)横書版 ■
■ 第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■