ドイナ・チェルニカ著、ラモーナ・ツァラヌ訳、No.012『少女と銀狐』をアップしました。『第15章 ボズガ、ラヴリとティーネスがなにかをたくらんでいる』『第16章 クモのわなにかかっていた少女、王子たちと子馬たち』『第17章 母親としての銀狐の心がいたむ』です。
今回は最後まで読んで『へっ』と驚いてしまいましたな。優れた童話やファンタジーには残酷で痛切な要素は不可欠です。あたりさわりのないヒューマンな物語展開にするから凡庸になる。ただ『少女と銀狐』のような展開は初めてかも。ビクトリアス・ポターの『ピーターラビット』にも動物界の残酷を取り入れた箇所がありますが、『少女と銀狐』とは手触りが違うな。ちょいと常軌を逸した狂気の愛かもしれません。
石川はファンタジー系童話の傑作がわたしたちを惹き付ける理由は、はっきりとは書かれていないけど、底の方に漂う狂気のような愛ではないかと思います。リンドレーンの『長くつしたのピッピ』の主人公は明るい女の子ですが、彼女は恐ろしく孤独なのです。よく読むと実在しているのかどうかも怪しい。そのピッピが男の子と女の子の兄妹と仲良くなる。ピッピがしゃべりにしゃべりまくるシーンがあって、しゃべればしゃべるほど彼女の孤独が際立つ。作家はそんな孤独なピッピを愛している。
『少女と銀狐』は内面小説ではなく、どちらかといえば事件によって動く小説になっています。しかし事件の起こり方はけっこう衝撃的です。こりは奇妙な小説だぞぉ。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■