ドイナ・チェルニカ著、ラモーナ・ツァラヌ訳、No.011『少女と銀狐』をアップしました。『第13章 ゴン・ドラゴンのどうくつにて』『第14章 子どもたちと子馬たちも大変な目に合う』です。童話は書きやすいようで、実は一番ハードルが高い文学です。ドイナさんは未知の作家ということもあり、どいなもんかいなぁ(爆)と思って読んできましたが、『少女と銀狐』はかなり面白い作品だと思います。
ドイナさんは敬虔なルーマニア正教徒でしょうね。ただ『少女と銀狐』はキリスト教的というより仏教的だなぁ。天上の世界からやってきたイルとアレイは食べ物を口にせず、匂いだけで生きている。仏さまに供えるお香と同じです。そして『少女と銀狐』は循環的世界観を持っています。中心のない調和世界と言ってもいいかもしれません。
今回は銀狐の天敵ゴン・ドラゴンが登場しますが、銀狐がボズガにだまされ罠にかかったと知ると、喜ぶより沈み込んでしまいます。単純な善と悪の戦いではないわけです。もちろんボズガは嫌われ者で、少女とイルやアレイを捕まえて食べようとする蜘蛛もいわば悪役です。ただ『少女と銀狐』のヒールには絶対的な悪の要素が薄い。彼らは〝結局のところ、わたしたちだって世界の一部なんだよ〟と言っているようなところがある。悪役というか、敵役には世界に調和をもたらすための重要な役割があるということです。
訳者のラモーナさんは『少女と銀狐』について、とてもルーマニア的な物語だと書いておられました。別に仏教を持ち出さなくてもいいんですが、ルーマニアには『少女と銀狐』のような汎神論的調和世界を求める精神性があるのかしらん。興味の湧くところです。
■ ドイナ・チェルニカ著 ラモーナ・ツァラヌ訳『少女と銀狐』『第13章 ゴン・ドラゴンのどうくつにて/第14章 子どもたちと子馬たちも大変な目に合う』縦書版 ■
■ ドイナ・チェルニカ著 ラモーナ・ツァラヌ訳『少女と銀狐』『第13章 ゴン・ドラゴンのどうくつにて/第14章 子どもたちと子馬たちも大変な目に合う』横書版 ■
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■