純文学エンターテイメント作家、遠藤徹さんの連載小説『ムネモシュネの地図』『第06回 (二)象の頭(象さん・イン・密室)(中編)』をアップしましたぁ。種山教授のウンチクとすっとぼけぶりは石川に大受けです。なによりこのお方、スーパーヒーロー的でないところがよござんす。アンチ・ヒーローというのは言い過ぎですが、世界を裏側から眺める知性を体現した容姿の人として描かれています。
遠藤さんはとても不思議で魅力的な作家です。この作家は暗い欲動から天に昇るような純な観念をも描くことができます。それは常にはっきりとした物語の形を取って表れる。物語とは主要な登場人物がいて、ある程度まで明確な起承転結があるということです。
石川は小説は原理として物語だと思います。その意味で100枚も200枚も使ってなんの進展もない純文学小説はあまり高く評価しません。仕事柄、純文学誌も読みますが、新人賞受賞作などでは文学金魚では採らないだろうなぁと思う作品も多い。ちょいと矛盾するようですが、物語的進展と言っても必ずしも起承転結のことを言っているわけではないのです。物語がわたしたちを、読者を、どこにも連れて行ってくれない純文学は不可ということです。
純文学は人間の内面を描く小説形態のことですが、それを突き詰めてゆけば必ず一定の核に達します。それが真実である必要はないのです。切羽詰まった〝嘘〟でもいい。それも人間真理の一つです。ある真理にたどり着いて、やっぱり嘘が混じっているなと作家が認識することで、作品は量産されてゆくものだとも言えます。
理論として説明できる人間的現象なら、小説といったまだるっこしい表現は必要ありません。宗教的真理のように、繰り返し同じ言葉と認識を唱えればいいのです。論理的にも理性的にも思想的にも解消できない絶対的矛盾やわだかまりが残るから小説が必要とされる。その意味であっけらかんとした起承転結の大衆文学も物足りない。読み終わって心がざわめくような、遠藤さん的な小説が一つの理想型です。
■ 遠藤徹 連載小説『ムネモシュネの地図』『第06回 (二)象の頭(象さん・イン・密室)(中編)』縦書版 ■
■ 遠藤徹 連載小説『ムネモシュネの地図』『第06回 (二)象の頭(象さん・イン・密室)(中編)』横書版 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■