佐藤知恵子さんの文芸誌時評『大衆文芸誌』『No.119 あさのあつこ「新樹、きらめく」(オール讀物 2017年06月号)』をアップしましたぁ。あさのあつこさんの「新樹、きらめく」を取り上げておられます。あさのさんは少年小説の傑作『バッテリー』で有名ですね。
佐藤さんは時代小説大好きですが、時代小説を二種類に分類しておられます。『一つは史実を扱った小説』で『史実がテーマである以上、そんなにいつまでもお作品を引っ張れない』ということになります。もう一つは『いつまでもシリーズ化できるお作品よ。一時間連続テレビドラマと同じでいつものメンバーが現れて、事件を解決してゆく時代小説が典型的ね』です。
じゃあ後者は現代小説と何が違うのかというと、『秩序よ。江戸は封建社会ですから、身分による序列がしっかりあります。身分差は基本的に越えられません。ですからある組織の中でトップに立つ人(たいてい主人公ね)が人格者で頭が切れると、すんなりと物語を動かしやすいの。主人公の〝徳〟が社会に秩序をもたらすという、エンタメでかつ理想的社会倫理を表現したお作品でございます』ということになります。
ただフィクショナルな時代エンタメ小説にもルールがあります。佐藤さんは『あんまり身分社会フレームがきついと物語のダイナミズムが失われるわね。そのため史実に即さないフィクショナルなヒーロー、ヒロインが登場する時代小説は、幕末が舞台ということが多ございます。具体的に言うと天明から天保時代頃ね。天保以降になると多かれ少なかれ明治維新の足音が聞こえてきますから、これも別の問題が起こるわね』と総括されています。
佐藤さんは時代小説は『かなりの決まり事が最初にあって、それさえ飲み込んでしまえば現代小説よりもはるかに書きやすいっていう面がございます』と批評しておられます。まただからこそ、優れた時代小説では『多かれ少なかれ時代小説のクリシェを崩す必要がございますわ』ということになる。身も蓋もないような分析ですがその通り。現代モノより時代小説は書きやすい面がありますが、秀作は少ないのであります。
■ 佐藤知恵子 文芸誌時評 『大衆文芸誌』『No.119 あさのあつこ「新樹、きらめく」(オール讀物 2017年06月号)』 ■
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