大篠夏彦さんの文芸誌時評『文芸5誌』『No.111 荻野アンナ「ダクト」(文學界 2017年03月号)』をアップしましたぁ。荻野アンナさんは芥川賞受賞作家の中では、それなりに読者がついている作家だと思います。その理由は、ちょっと書きにくいですが彼女が自己の介護体験や癌の闘病体験を小説などにしているからでしょうね。同じ苦しみを経験した人たちが読者になる可能性があるのです。
もちろん批判されるような話ではありません。重松清さんははっきり言えば、受験生を読者パイとした思春期小説を書いておられます。私立中学受験問題で重松作品は定番であり、受験生はもちろん親御さんも買って読む。底固いジャンル小説です。うっすらとした自殺願望のある〝自分が嫌い系小説〟なら、柳美里さんや最果タヒさんの作品があります。もちろん彼らは代表的ジャンル作品だけを書いているわけではありません。ただ創作者は必ず自己の成功体験に縛られる。それを抜け出すのはかなり大変なのです。
大篠さんは『小説家は一般社会常識に照らし合わせれば時にロクデナシだ。普通は隠しておきたい家族の恥を書き、自分の恥をさらす。介護でも母子密着病理でも癌でも、小説に使えるものは結局のところ全部使う。それが小説家の性(さが)というものだ。その恥さらしが小説家としての自己顕示欲を満たすための手段でないなら、必ずある真理にまで届かなければならない』と批評しておられます。
作家的な倫理というものは、世間一般のそれとはやはり違うでしょうね。極論を言えば『ある真理』に届いていれば、どんなに愚かで恥ずかしい実体験を書いていても許されると思います。
■ 大篠夏彦 文芸誌時評 『No.111 荻野アンナ「ダクト」(文學界 2017年03月号)』 ■
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