純文学エンターテイメント作家、遠藤徹さんの連載小説『ムネモシュネの地図』『第02回 (一)象の鼻(丸山町)(上編)』をアップしましたぁ。渋谷のラブホテル街で、ラブホテルそっくりの外観の建物の中で、私設の〝芸術と驚異の部屋(クンスト・ウント・ヴンダーカンマー)〟を持っている種山教授が登場します。遠藤さんには以前『血みどろ博士』を連載していただきましたが、血みどろ博士系の人物ですな。
この〝芸術と驚異の部屋〟探訪が当面続くわけですが、こうしたところに淫するように没入してゆくのが遠藤作品の特徴であり魅力です。つまり単純なラノベではない。ホラー、推理、ラノベと小説はジャンル別に分類されますが、そのいずれのタイプの作品も書くことができて、かつ作家性を決して失わない(見失わない)のが遠藤さんの高い作家能力です。もちろんステレオタイプのラノベという評価軸を前面に押し出せばいろいろ批判点は出てきます。ラノベとしては『レベルが高すぎる』とか『寄り道しすぎてる』とかね(爆)。だけんどそれは作家がラノベジャンルに飲み込まれているだけとも言えるわけです。
本を売るためにはジャンル別の宣言が不可欠です。読者がサスペンスコーナーにある本を買って、中身がもう100%のホラーだったらやっぱ『話が違うっ!』と文句を言いますよね(爆)。ただ版元の要請で作家が自己の表現欲求を押し殺して純粋ホラーやサスペンス、ラノベを書くのはちょっと違うだろうと思うのです。また昨今この圧力は版元側から強まっています。純文学業界にいるとわからないですが、エンタメ小説業界にはまだ鉄板的〝売れ筋〟がある。本が売れにくい状況で版元側は、クリシェに近い売れ筋小説を書くよう作家に強く求める傾向があります。
この作家性と売れ筋のバランスはかなり難しい問題です。金魚屋だってはなっから売れないだろうなぁといふ小説はWelcomeではありません。ただ版元と書店都合のジャンル別縦割り出版が素晴らしいとも思えないんだなぁ。作家という横軸並びの出版があってもいい。もちろんそれにはジャンル横断的な作品を書ける作家が必要です。遠藤さんはそういった作家の一人です。
金魚屋は文学をジャンル別ではなく総合的に捉える〝総合文学〟を掲げていますが、具体的に言うとそれはジャンル別ではなく作家別の文学横並びラインを文学の世界に定着させることです。それにはプラットホームが必要であり、またそれが可能な高い能力を持つ作家たちが必要です。遠藤さんは金魚屋にとって重要な作家さんなのでありますぅ。
■ 遠藤徹 連載小説『ムネモシュネの地図』『第02回 (一)象の鼻(丸山町)(上編)』縦書版 ■
■ 遠藤徹 連載小説『ムネモシュネの地図』『第02回 (一)象の鼻(丸山町)(上編)』横書版 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■