寅間心閑(とらま しんかん)さんの連載小説『松の牢』(第05回)をアップしましたぁ。小説で一番難しいのは、普通の人間の奇妙な知性を描くことです。もそっと具体的に言うと、小説の主人公は知的になりがちです。明らかに社会の底辺にいても、小説の主人公はたいていとっても頭がいい。純文学小説などでは、なんで主人公が社会底辺にいるのか理解に苦しむことがしばしばです(爆)。
寅間さんの小説には、そういったよくありがちな小説的矛盾がないと思います。まあはっきり言えば、寅間小説ではちょっと危ない領域に足を踏み込んだ登場人物が多いのですが、彼らの知性は肉体に即しています。追い詰められて考えて行動する。その肉体的な躍動が、知的な飛躍となって描かれていることが多い。この肉体レベルの状況をもっと社会の底辺に下げると、かなりのクライムサスペンス的小説になるでしょうね。
相変わらず小説を含む文学の世界の状況は厳しいです。新人作家さんは夢いっぱいで意気軒昂の方が良いのですが、あまり状況を理解しないままでいると、知らず知らずのうちにテンションが落ちてきます。ちょっと厳しいことを言うと、たいていの作家は何をやっても報われない。それが現実です。この厳しい現実をブレイク・スルーするためには、自己の資質を正確に読み、時代の流れを的確に把握する必要があります。好きなことをして生きてゆくのが作家の理想だと思います。だけどそれは自己中の殻に閉じこもることではない。資質を社会に適合させて力を得て、初めて可能になることです。
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
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■ 予測できない天災に備えておきませうね ■