山本俊則さんの美術展時評『No.073 ブリューゲル『バベルの塔』展(後編)』をアップしましたぁ。ブリューゲルは農民を描いた画家として知られます。17世紀初頭に庶民の生活を描いた画家はあまりいないのです。その意味で近代絵画の先駆者です。また彼は宗教画家でもあり、バベルの塔を2点描いています。一五六三年作と、死の前年の一五六八年頃作の二つです。一般には一五六三年作が有名なのですが、今回来日したのは一五六八年頃作です。一五六八年頃作は一五六三年作の約半分の大きさです。
ただ死の前年に描かれたブリューゲル『バベルの塔』(ボイマンス版)には、はっきりとした宗教的異図が読み取れない。この作品がわたしたちに強い印象を与えるのは、塔が崩れそうにないからである。ほかのブリューゲル作品と同様、ボイマンス版にも細密な描き込みがある。しかし塔の中の人々に不安な様子はなく、日常的な建設仕事に従事している。
もちろん画題として『バベルの塔』を選んだ以上の意図が読み取れないからと言って、ブリューゲルがアンチ・キリスト的心性を表現したとまでは言えない。しかしオランダ独立戦争前後から、独立の方便であり、また精神的拠り所でもあったプロテスタント化の波によって、オランダ(ネーデルランド)では独自の精神風土が芽生えていた。
山本俊則
どの文化圏でも頂点と呼べるような時期があります。オランダではブリューゲルが生きた時代がそれに当たります。スペインからのオランダ独立戦争が起こり、プロテスタントによる聖像破壊運動が吹き荒れました。またこの時期はオランダの大航海時代でもあります。そういった精神的な流れがブリューゲルの絵に集約されているようなところがある。オランダ近代絵画がブリューゲルから始まると言われる由縁でしょうね。
■ 山本俊則 美術展時評『No.073 ブリューゲル『バベルの塔』展(後編)』 ■
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