谷輪洋一さんの文芸誌時評『No.014 文藝 2016年夏季号』をアップしましたぁ。江國香織、川上弘美、中島京子、堀江敏幸、森見登美彦さんによる『王朝文学は連鎖する』といふ座談会を取り上げておられます。谷輪さんは『ここ何年間、いや何十年間も文学業界は低迷していて、それでもマーケットを縮小しながら従来路線を死守することで権益を守りつつ、外の世界を伺ってヒットを狙う、というやり方ができればまだよい。しかし正直、文藝には少しきついと思う。そのぶん文藝のスタンスやその苦慮の仕方は、どこよりもクリアに文学の今を表わしているとも言える』と書いておられます。石川もそう感じるかなぁ。
『文藝』さんはどの純文学文芸誌よりも、純文学界の低迷を打開しようと格闘しておられると思います。雑誌の特集は、編集者の夢を、他者である作家を使って実現しようとする場でもあります。でも『文藝』さんは季刊なので年4回しか対外的アピールの場がなひ。3ヶ月に一回、力のこもった特集を組むのは無理です。ドンピシャで編集者の夢に沿った仕事をしている作家もいませんし、編集者のヴィジョンを作家に納得してもらうにしても3ヶ月は短すぎる。そのため『文藝』さんからは、編集部の苦悩といふか、フラストレーションが伝わってくるところがあるかなぁ。
谷輪さんは『我々にとって王朝文学とは何か。それは単に王朝期の文学という意味ではなく、王朝を前提とした文学ということだ。そこには権力と富、制度、それ以上に日本語と日本文化の中心的揺籃としての王朝を意識して背景とする、ということであり、それを現代に重ね合わせるなら、結局は現代の私たちの、少なくとも文化的中心を問う結果となる。そしてそれこそ今の私たちに欠落するものだ』と批評しておられます。谷輪さんの批評は『文藝』さん本来の編集意図に重なるものでしょうね。
文学に限りませんが、エンタメ業界は裾野が広いので、それなりのノウハウがあればそこそこ売れるコンテンツを出してゆくことができます。でも純文学業界はそうはいかない。編集部が迷い苦悩しているといふことは、無意識的であれ、読者もまた迷い苦悩しているといふことです。そこにはっきりとした道筋をつけてやらなければ純文学業界では活路が見いだせないでしょうね。要は読者が〝これは本物だ〟と認知するような作品や作家が現れてこなければ、継続的に純文学作品を売るのは難しい。『文藝』さんの苦悩はもちろん文学金魚の悩みでもありますぅ。
■ 谷輪洋一 文芸誌時評『No.014 文藝 2016年夏季号』 ■
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第04回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
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