小説ジャンル越境作家、仙田学さんの新連載小説『ツルツルちゃん 2』(第03回)をアップしましたぁ。『第一章 空から舞い降りたイケチン(後編)』です。明るく軽い(ライト)タッチの小説なのですが、奇妙と言えば奇妙な作品ですね。表面(表層)はステレオタイプな人物造形が為されていますが、その地下茎が見事に反転しているやうな(爆)。
「世のなかには、守らなきゃいけないものが、たったひとつだけある。なんだと思う?」
ことばを切ると、イケメンは唇の端を持ちあげた。
酷薄そうな、だが爽やかな笑みを浮かべてみせる。
「女性の美しさだ。それが失われそうになってるところを気づきもしないで見ている男なんて、言語道断。おれはどうかっていうと、全身全霊をあげて、女性の美しさを守るつもりだ。女性のみなさん。おれは絶対見捨てたりはしないから。ついてきてくれ」
早い話がアホみたいな自己紹介だ。
だがイケメンチンドン屋の、よく通るバリトンの声は、おれたちのエモーションを揺さぶった。
気がつけば、おれの頬には涙が伝っていた。
(仙田学『ツルツルちゃん 2』)
「女性の美しさを守る」と宣言したイケチン王子は、まあはっきり言えば、女性の内面には鈍感そうです。んで超絶美少女・兎実ふらちゃんは、男の地位や名声や見た目の良さに弱い。担任のナイスバディの御殿場なたねは、チャック全開、パンツ丸出しで現れるわけです。このあたりにラノベを書いても、仙田さんの仙田学たる由縁がありさうです。
ただラノベはやはり、作家の〝愉楽〟が伝わってこないといい作品にならないと思います。作品を発表する時は、どんな場合であろうと社会を無視することはできませんが、まず作家が楽しんでいなければ作品は軽くならないし、輝きも発しないでせうね。作家はやはり、読者が読み終えてすぐに忘れ去てしまふような作品は書きたくなひものです。作家の愉楽が感じられ、その上軽くてもどこかで現代社会に食い込んでいることが、良いラノベの条件になると思ひますですぅ。
■ 仙田学 連載小説 『ツルツルちゃん 2』(第03回) pdf版 ■
■ 仙田学 連載小説 『ツルツルちゃん 2』(第03回) テキスト版 ■
文学金魚では来る六月上旬に第01回『文学金魚大学校セミナー』を開催します。また『~Web文芸誌のパイオニア~文学金魚大学校セミナー開催・新人賞支援プロジェクト』(クラウドファウンディング)を開始しました。皆様の積極的なご参加を心よりお待ちしております。