小説ジャンル越境作家、仙田学さんの新連載小説『ツルツルちゃん 2巻』(第01回)をアップしましたぁ。仙田学さんは1975年生まれで、『中国の拷問』で早稲田大学新人賞を受賞しておられます。『中国の拷問』は河出書房新社刊行の『盗まれた遺書』に収録されています。また仙田さんはラノベ作家でもあります。オークラ出版のNMG文庫から『ツルツルちゃん』が刊行されています。文学金魚新連載作品は、『ツルツルちゃん』続編であります。
『ツルツルちゃん 2巻』は典型的な学園物ラノベですが、なんか奇妙な作品なんだなぁ。ステレオタイプなまでの美少女が登場しますが、みんなどこかに欠落を抱えています。男の子では、この作品で重要な役割を担うイケメンチンドン屋こと池王子珍太郎(イケチン)は、すんげぇ美男子なんだけど、彼も実に奇妙な人として描かれています。そこに主人公の僕やクラスメートが加わって物語が展開してゆきます。あくまでラノベ形式なんですが、最後まで読んでいただくと、仙田さんといふ、文学金魚好みの特殊作家の奇妙さと面白さがよくわかる作品になっていると思いますです、はい(爆)
昨日も書きましたが、文学金魚は総合文学を掲げています。別に小説家に詩を書けとか詩人に小説を書くよう奨励しているわけぢゃありませんが、現在のような状況ではジャンルを相対化して捉える必要があります。抜きがたくそーゆー資質ならしょーがないですが、小説ジャンル内で自己を純文学作家とか大衆作家と規定する必要はなひと思います。
作家は様々な主題を抱えていますが、作品によっていわゆる小説ジャンルをその都度選択すれば良いのです。だいたい日本文学の祖である漱石さんがエンタメ小説の『吾が輩は猫』を書き、純文学小説の『心』を書いているわけです。小説がジャンル分けされ息苦しくなってきたのは戦後のことです。こんだけ文学不況の昨今は、特に純文学作家は抽象的な前衛作品を書く冒険をするだけでなく、小説ジャンルを乗り越えるといふ冒険もすべきでせうね。
仙田さんは純文学作品もお書きになり、ラノベもお書きになる作家です。小説と詩という文学ジャンルを乗り越える場合もそうですが、小説内でジャンルを越境する場合でも、作家に表現の核がなければ場当たり的作品になって収拾がつかなくなってしまひます。今回の仙田さんの作品は軽いですが、そこにはやはり作家の確固たる表現主題があるのですぅ。
■ 仙田学 新連載小説 『ツルツルちゃん 2巻』(第01回) pdf版 ■
■ 仙田学 新連載小説 『ツルツルちゃん 2巻』(第01回) テキスト版 ■
■ 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)は3月31日〆切です ■
金魚屋では21世紀の文学界を担う新たな才能を求めています。
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