岡野隆さんの詩誌時評『No.019 月刊俳句界 2014年09月号』をアップしましたぁ。「再検証 大正俳句の格調」という特集を取り上げておられます。「大正俳句の格調」はあまり聞かないように思いますが、岡野さんは「正岡子規以降の俳壇に新風をもたらしたのは河東碧梧桐だった。・・・しかし五七五に季語の、いわゆる〝俳句定型〟からの逸脱を積極的に許容した新傾向俳句(自由律)派が俳壇の大勢を占めることはなかった。高濱虚子が大正二年に俳壇に復帰すると、〝有季定型花鳥諷詠写生俳句〟を是とする「ホトトギス」が俳人たちの圧倒的な支持を集めた。・・・「大正俳句の格調」とは、虚子俳壇復帰後の大正年間の俳風を指すのである」と書いておられます。
春風や闘志いだきて丘に立つ 高濱虚子
芋の露連山影を正しうす 飯田蛇笏
日輪を送りて月の牡丹かな 渡辺水巴
頂上や殊に野菊の吹かれ居り 原石鼎
さみだれのあまだればかり浮御堂 阿波野青畝
流氷や宗谷の門波荒れやまず 山口誓子
葛飾や桃の籬も水田べり 水原秋櫻子
特集からの孫引きですが、確かに清新な作品が多いやうな。岡野さんは虚子の俳壇復帰について、「僕は小説家になれなかった虚子というマイナス面に注目したいわけではない。むしろ虚子の断念の深さがその後の俳句文学に決定的な影響を与えたのではないかと思う。・・・単純に自然(花鳥)を詠むことで人間精神の様々な機微を表現できると発見したことから俳句文学は始まっているのである。・・・虚子の小説断念と俳壇復帰は、自らの資質の再確認と俳句文学の本質把握が同時進行したものだと言うこともできると思う」と批評しておられます。面白い読解だなぁ。やっぱ批評は本質的には創作者の刺激になる、な面白いものでなくっちゃね(爆)。
■ 岡野隆 詩誌時評 『No.019 月刊俳句界 2014年09月号』 ■