ラモーナ・ツァラヌさんの連載エセー『交差する物語』『No.012 人生を変えるような出会い(下)』をアップしましたぁ。ラモーナさんとの能との出会い後編です。ラモーナさんはまず世阿弥作の謡曲『鵺』(ぬえ)に惹かれ、次いで『風姿花伝』に代表される世阿弥の能楽論に決定的な衝撃を受けて能の研究者の道を歩み始められたのですね。
ラモーナさんは、「そんなわけで私は世阿弥と結婚しているのだ。冗談だが、そう言うと私の知り合いは頷きながら笑ってくれる。それくらい勉強や研究に時間をかけているから、ある意味で真実だ」と書いておられます。不肖・石川、偉いな~と思ふと同時に、ラモーナさんのように一つのことに激しく集中する時期がなければ、研究者であれ創作者であれモノにはならないだろうなぁとも思います。
人間の能力はヴィジョンと努力によって伸びたり萎んだりします。ヴィジョンは方向性です。天才は1パーセントの才能と99パーセントの努力から生まれるという言葉がありますが、ヴィジョンは1パーセントの才能に該当します。これはまさに生まれながらの才能と言うしかないものですが、あるヴィジョン(プラトン的イデア=真理と言っていいかと思います)に沿って努力しなければ、その大半がムダになってしまふこともあります。
しかし努力も必要なのです。たゆまず努力すれば、一定レベルの研究者や創作者にはなれると思います。でも本当の勝負はそこからなのであって、自分がどこに到達しようとしているのか、そのヴィジョンの正しさが努力の先に問われるのです。
不肖・石川、ラモーナさんの文章をずっと読ませていただいていますが、ラモさんのヴィジョンは正しいような気がします。ヨーロッパ的な文脈でも日本的(古典文学・芸能的)文脈でも正しい方向を向いているような気がします。いい研究者におなりになるでしょうね。
■ ラモーナ・ツァラヌ 連載エセー 『交差する物語』『No.012 人生を変えるような出会い(下)』 ■