山本俊則さんの美術展時評『No.034 バルチュス展』をアップしましたぁ。東京都美術館で開催されたバルチュス展と、バロットン展が開催された三菱一号美術館で開催された『バルチュス 最後の写真-密室の対話』展を取り上げておられます。山本さん、バルチュスが大好きなやうですね。力の入ったコンテンツになっております。
山本さんはバルチュス展について、『展覧会中に配布されたチラシには「賞賛と誤解だらけの、20世紀最後の巨匠」とある。・・・すべての美術展が・・・見る人すべてにとって満足できる内容になることは少ない。今回のバルチュス展は・・・完全な〝大回顧展〟とは言えない。なぜなら代表作が数点欠けているからである。・・・また〝賞賛と誤解だらけの〟というキャッチ・・・には、「バルチュスはロリータ・コンプレックスだったのか?」という問いが含まるだろう。・・・しかし性的嗜好の有無が明らかになったとしても、それによってバルチュス作品の評価は変わらないと断言できる。ただ〝賞賛と誤解だらけの〟というキャッチが、閲覧者の心理に、バルチュス=ロリータ・コンプレックスの画家という情報を埋めこむことになってしまったのではないかと恐れる』と書いておられます。不肖・石川、山本さんの批評を読んで、今回のバルチュス展について感じていたモヤモヤが解消された気分です。
山本さんはまた、『二〇世紀末頃から、バルチュス、フランシス・ベーコン、アルベルト・ジャコメッティといった、二〇世紀前衛芸術とは微妙に距離を取った作家たちの作品の評価が上がり始めた。・・・それは重要ではあるが、麻疹のように流行した前衛芸術の嵐が過ぎ去った後に、ヨーロッパやアメリカのコレクターたちが、絵画の本質を探究し始めた結果だろう。・・・彼らは後ろ向きの前衛である。絵画の本質に根ざしていたからこそ、その評価が上がり続けているのである』と批評しておられます。示唆に富む優れた美術批評だと思います。ごゆっくりお楽しみあれ。