ラモーナ・ツァラヌさんの『青い目で観る日本伝統芸能』『No.024 文化の交差点に立つ落語』をアップしましたぁ。8月3日に行われた立川志の春さんの英語落語独演会を取り上げておられます。ラモーナさんによると、志の春さんは『大阪府生まれで、千葉県育ちの立川志の春は、学生時代をアメリカで過ごし、イェール大学を卒業後、日本へ帰国した。3年間の会社勤務を経たところで立川志の輔の落語に出会い・・・志の輔に弟子入りした。現在は落語家として活動されており、古典落語や新作落語のみならず英語でも落語を演じる』異色の落語家さんです。

 

ラモーナさんは『英語で落語を演じるということが、噺の内容を英語に訳し、それで済むのだったらさほど難しいことではないだろう。しかし話芸である落語は日本文化に深く根付いており、落語の演目を別の言語にしようとする時は、言葉を訳すというよりも文化をトランスレートする行為になる』と批評しておられます。

 

そうでせうねぇ。ある言語から言語への文化の移植は簡単と言えば簡単ですし、不可能だと言えば不可能です。人間は自分一人で性急に結論を出したがる傾向のある動物なので、しばしば「翻訳なんて簡単だよ」、あるいは「翻訳は本質的に不可能だよ」と断言したがるところがある。しかしどちゃらも正しく、かつ正しくなひでせうね。イヤになるほど翻訳の場数を踏んだ、中庸な姿勢がある文化を正しく異言語(異文化)に伝達できるのだと思ひます。

 

ラモーナさんはまた、『違う文化を背景にしている人々に落語の噺が受けるためには、演目選びが勝負である。時代や文化が違っても、人間には変わらないクセのようなものがある。・・・世界中の人々に共通している・・・根本的な心理を土台にする物語なら、どの文化の人間も親近感を覚えることができるだろう。言葉のレベルにおける調整が次の段階としてあるが、これも上手くクリアすれば物語の内容は問題なく通じるし、最終的な狙いである笑いが生じる』とも批評しておられます。

 

志の春さんは、年に2回はシンガポールで英語落語を披露しておられるそうです。恐らく様々な失敗と成功を積み上げておられるのでせうね。日本のアニメはもちろん能や歌舞伎などの伝統芸能もそうですが、腑に落ちるきっかけさえ掴めば、異文化に属する外国人でも比較的簡単に、そのディープな世界まで理解できるやうになります。翻訳はテクニカルな言語変換作業はなく、本質的には正確な文化理解に基づくその伝達行為です。いつの時代でも優れた媒介者が優れた受容者を生み出すのでありますぅ。

 

 

ラモーナ・ツァラヌ 『青い目で観る日本伝統芸能』『No.024 文化の交差点に立つ落語』 ■