ラモーナ・ツァラヌさんの『青い目で観る日本伝統芸能』『No.005 現代に呼びかける古典―木ノ下歌舞伎による『東海道四谷怪談―通し上演―』』をアップしましたぁ。フェスティヴァル/トーキョーは、池袋の東京芸術劇場を中心に行われる日本最大の舞台芸術フェスティバルです。『東海道四谷怪談―通し上演―』は、フェスティヴァル/トーキョー2013のプログラムで昨年11月に上演されました。木ノ下歌舞伎は主宰の木ノ下祐一さんと、演出・舞台美術家の杉原邦生さんのお二人による演劇集団で、HPには『歴史的な文脈を踏まえた上で現行の歌舞伎にとらわれず新たな切り口から歌舞伎の演目を上演する』とあります。
『東海道四谷怪談』は、言うまでもなく江戸後期の歌舞伎狂言作者、鶴屋南北の作品です。木ノ下歌舞伎はそれを現代劇として演じたわけですが、単なる現代的翻案ではありません。ラモーナさんは『江戸時代の状況を反映している戯曲を現代に移して上演してみようとなると、やはり鶴屋南北と同じように自分が生きている社会の風潮を読み解いて、原作に潜んでいる眼識を私たちの今と結びつけないといけない。・・・元々この戯曲に新鮮さや、色々な演出方法に適応できる柔軟性があり、それを再検討し、さらけ出すのが今回の上演の意図だったであろう』と論じておられます。ラモーナさんはまた、主宰の木ノ下さんは『歌舞伎の台本に宿る可能性を徹底的に探検する』人であり、演出・舞台美術家の杉原さんは『物事を原点から考える習慣があるようで、その手法にはまず先入観のようなものがない』と書いておられます。
木ノ下歌舞伎さんの方法論は、オーソドックスなようで斬新なのではないでしょうか。古典劇を台本にする舞台やドラマは、1980年代頃までは〝新しさ〟を前面に打ち出していたように思います。しかし木ノ下歌舞伎さんは、まず古典と現在に共通する基盤を探ってから、その上に演出や舞台装置として現代的要素を付加しておられる。今と昔の違いを強調するのではなく、現代社会にも潜む普遍的なものを探ろうとしておられるように感じます。なおAki Tanakaさんによる『東海道四谷怪談―通し上演―』の写真はフェスティヴァル/トーキョーさんからご提供いただきました。心から感謝申しあげます。
■ ラモーナ・ツァラヌ 『青い目で観る日本伝統芸能』『No.005 現代に呼びかける古典―木ノ下歌舞伎による『東海道四谷怪談―通し上演―』』 ■