『安井浩司「俳句と書」展』 開催記念コンテンツをアップしましたぁ。ラインナップは岡野、山本、鶴山さんの連載 3 本に、田沼泰彦さんの新連載 『『声前一句』の眼』 の合計 4 本です。岡野、山本、鶴山さんの連載は第 10 回とついに 2 桁に乗りましたが、ちょいバテ気味のようですね (笑)。山本さんだけぢゃなく、岡野、鶴山さんも 『資料整理するだけで力尽きてるよ~』 とおっしゃっていました。ま、皆さんのお原稿を整理・編集して統一感のあるコンテンツにしている石川の働きに免じて、みなさんこれからも頑張ってくださいませませ (笑)。
文学金魚は小さいながら文学ジャーナリズムの一つですが、文芸誌時評や詩誌時評で文学界の動きは総括的に捉えますが、今月、あるいは今年どんな本が出版されて、その出来はどうだったのかといった時評は基本的にやらないといふ方針がそこはかとなくあります。金魚でやらなくても他の文芸誌がやってくださるからですが、もうちょい別な理由もあります。
夏目漱石先生は文学史を約40年スパンで黎明期・全盛期・衰退期の3つに分け、明治維新から明治40年までは黎明期であり、この期間に現れた文学作品は偶然と僥倖で成功した作品が多いので、後の世では読まれなくなる、文学史から消えるだろうとおっしゃったそうです。この預言は大筋当たりましたね。明治文学は漱石先生や島崎藤村らが現れる明治30年代末から始まります。30年代までの尾崎紅葉や幸田露伴らの作品は、文学史にその名を留めていますが実際にはほとんど読まれていないわけです。
漱石先生の預言を当てはめると、明治元年から40年までが黎明期、明治41年から昭和22年までが全盛期、昭和23年から昭和62年までが衰退期で、現在は混乱した黎明期のまっただ中だといふことになります。あれほど力強かった戦後文学や戦後詩、現代詩が跡形もなくその影響力を失ってしまっている現在では、漱石先生の預言はちょっと真剣に考えてみる価値があるのではなひでしょうか。
先生の預言では偶然と僥倖が支配する黎明期は昭和63年から2028年頃まで続くことになります。先生は明治の40年間(黎明期)など、後から振り返れば一瞬だとおっしゃったそうですが、今現在書かれている作品が、50年後、100年後には全く読まれなく可能性はあります。文学金魚は漱石先生の預言を絶対的に信じているわけではないですが、現在が、社会的争乱はともなっていないですが、何か底の方から変革が始まっている過渡期だといふ感覚は持っています。
こういふ時代には、誰かが立ち止まって原理から考え直してみる必要があります。文学金魚はジャーナルとしてそれをやってみようと考えているのであります。安井浩司さんについてのコンテンツをアップし続けているのもそのためであります。中途半端な理解はかえって正確な読解を妨げます。一点突破すれば、全体が見えてくるといふこともあるのですぅ。
■ 山本俊則 安井浩司墨書句漫読 『No.010 『御灯明ここに小川の始まれり』』 ■
■ 岡野隆 唐門会所蔵作品 『No.010 未刊句集篇③阿賴耶抄』 ■
■ 鶴山裕司 安井浩司初期参加同人誌を読む 『No.010 『現代行動詩派』『ぽぷるす』』 ■