遠藤徹連載マンガ『えくすぽえめんたる』&連載小説『虚構探偵―『三四郎』殺人事件―』(第23回)をアップしましたぁ。『三四郎』で一番有名な「迷える子(ストレイ・シープ)」のシーンというか分析に入りました。
「そう、聖書でストレイ・シープといえば、神や救世主あるいは牧師などに導かれなければ、自分の進むべき道がわからない衆生を指すわけだからね。つまり、これはさっきまでの話とつながっているわけだ。寄る辺ない自分に対して、誰も責任をとってくれないという現状を指していることになるよね」
「兄恭助は、父母のない家で自分が先に結婚したら、妹の美禰子が寄る辺を失うという現実を顧みない。恭助の兄の友人であった広田も、そういう状況の自分を助けてはくれないし、結婚という形で自分を救える野々宮は、経済的事情を理由にそこに踏み切ってくれない。そして、大混雑の菊人形展でも、この二人は、自分をほったらかして議論に熱中しているばかりだ」
「当然、三四郎には、『この言葉を使った女の意味』がわからない。なぜ迷子に、彼女がこの英語を宛てたのかがわからないわけよね」
「ここで三四郎は、美禰子をまた見失ったと感じただろうね。三四郎がストレイ・シープとなったわけだ。だから、景色が『寒いほど寂しい』と感じられるわけだ。つまり、この風景は、三四郎の心の中を表現しているわけだよね。
遠藤徹 連載小説『虚構探偵―『三四郎』殺人事件―』
「迷える子(ストレイ・シープ)」の意味は、遠藤さんが小説中で分析しておられる通りだと思います。三四郎はそんな美彌子に振り回されるわけです。ウブですからドキドキしながら楽しんでいたとも言えますね(笑)。
『虚構探偵』は小説『三四郎』の中で殺人事件が起こっていて、犯人を探す目的の小説です。ただ『虚構探偵』を読んでいると小説家がどのように他者の作品を読んで分析して、それを自己の作品の糧にしているのかよくわかるはずです。
■遠藤徹 連載小説『虚構探偵―『三四郎』殺人事件―』(第23回)縦書版■
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