ラモーナ・ツァラヌさんの短編小説『忘れないように』(前編)アップしましたぁ。ラモーナさんはルーマニア出身で能楽研究者ですが正教徒でもあります。日本人は明治維新以降、カトリック中心のヨーロッパ西側諸国の教義や文学、哲学に慣れ親しんでいます。しかし同じキリスト教といってもカトリックと正教はかなり違います。
ラモーナさんはちょっと前にTwitterで、ルーマニアの実家で暮らす幼い甥か姪っ子の元に聖ニコラウスがプレゼントを届けに来たと書いておられました。正教では子どもたちにプレゼントを届けてくれるのはサンタさんではなく聖ニコラウスだったりします。もちろん12月24日はクリスマスイブですが、正教ではキリストの誕生日よりも復活の日であるイースターを盛大にお祝いしたりします。宗教的に言えばイースターを盛大に祝う方が古い教義の解釈です。
今回の短編小説『忘れないように』はラモーナさんの精神的バックグラウンドがよくわかる小説です。ラモーナさんの小説ではこれまでも光、音が重要な要素として現れていますが、それも正教徒というバックグラウンドを考えれば当然ですね。キリストは荒野を彷徨いましたが彼が彷徨った荒野は砂漠です。なにもかも全部見える。見えることで惑い、聞こえることで導かれるのですね。それは日本を含む東洋には馴染みのない精神的地平です。日本語で書いている限り日本文学に属しますから、ラモーナさん、日本文学の貴種であります。
■ ラモーナ・ツァラヌ 短編小説『忘れないように』(前編)縦書版 ■
■ ラモーナ・ツァラヌ 短編小説『忘れないように』(前編)横書版 ■
■ 金魚屋の本 ■
■ 金魚屋 BOOK SHOP ■
■ 金魚屋 BOOK Café ■