第8回金魚屋新人賞受賞の松岡里奈さんの小説『スーパーヒーローズ』第2回をアップしましたぁ。今回から小学校篇です。『みんな一緒にスタート、みんな一緒にゴール、という教育方針の中、子供たちの方が弱肉強食の論理を敏感に理解しており、勝ち負けがはっきりつくこの大会はよい興奮剤だった』とあるように、松岡さんはゆとり世代のようです。ゆとり世代はダメダメと言われたりしますが、石川はちっともそう思いません。若い世代に対する期待値の低さはいつの時代でも同じ。優れた人材は出るときゃ出るのです。
まだ第2回ですが、この小説、どこに読者を連れて行ってくれるのだろうという興味をいたく掻き立てます。それが物語の力というものです。主人公が〝スーパーヒーローズ〟と呼ばれるある超越性への憧れを抱えていることは誰にでもわかります。では生物学的に女性である主人公が、ある種の男性性に憧れていることを示唆しているのか? もちろん違います。スーパーヒーローズという観念はもっと複雑です。頭で考えた抽象観念ではない。比喩的に言えば小学生の私が成長するにつれこの観念も育ってゆきます。
『私にとって、松田といえば血だった。切っ掛けは、彼が何の気なしに見せてきた転び傷だった。』
小学生篇で重要な役割を果たすのは同級生の松田というガキ大将です。この子のイメージは血ですね。そして主人公は高い場所を好む。作家が計算し尽くして設定したイメージや場所ではありません。小説のテーマというか観念が自ずと具体的な形を取ったものです。
小説にはなんらかの大きなプロットが必要ですが、小説のリアリティを保証するのは細かなディテールです。このディテールのリアリティは頭で考えて生まれるものでは必ずしもありません。むしろ作家の無意識の言語化であるのが理想です。
石川はYouTubeの文学金魚チャンネルの『Vol.9 松岡里奈『スーパーヒーローズ』はなぜ文学金魚新人賞に選ばれたの!?』で『スーパーヒーローズ』には構造があると言いました。小説の構造とは人間の毛細血管のようなものです。構造があればディテールまで血が回ることが多いわけです。
■ 松岡里奈 連載小説『スーパーヒーローズ』(第02回)縦書版 ■
■ 松岡里奈 連載小説『スーパーヒーローズ』(第02回)横書版 ■
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■ 第9回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
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