鶴山裕司さんの連載長篇詩『聖遠耳 Sei Onji』No.007をアップしましたぁ。金魚屋から『日本近代文学の言語像Ⅱ 夏目漱石論-現代文学の創出』を好評発売中の、鶴山裕司さんの長篇詩2,187行です。
聖隷横浜病院のはす向かいの
大聖院の墓地に僕は立っている
緩やかな弧を描く水平線に
川崎の町と高層ビルが見える
それが一瞬で海に変わる
青い 青い
姉「見つかったの?」
僕「いいえ 見つかりません」
ようやく声が出た
墓地を歩きながら
石に刻まれた名前を読んでゆく
姉「見つからないはずだよ」
僕「珍しい苗字ですから」
姉「違うよ お前の探しているものはここにはないんだよ
そんなこと わかってるはずじゃないか
お前の居場所はどこにもないんだよ」
僕は渋谷のスクランブル交差点にいる
109の巨大な女が太陽を背に
僕を見下ろしている
大型ヴィジョンが桜の開花を伝える
もう誰も喩では納得しない
満足しない
現実の残酷に曝されなければならない
(鶴山裕司『聖遠耳 Sei Onji』)
『聖遠耳 Sei Onji』は入院生活の日常から始まりますが、一気に意識と無意識のはざまに潜航してゆきますね。今回のパートはその典型だと思います。鶴山さんは物語と戯曲をミックスしたような書き方も採用しておられます。そして鶴山さんの詩の特徴である引用の織物でもある詩篇です。この詩篇、面白い。読んでいて飽きないし、一気に最後まで読んでしまえる珍しい詩篇です。内容はぜんぜん違いますが、ちょっとマヤコフスキーの長編詩が持っている疾走感に近いかな。
■ 鶴山裕司 連載長篇詩『聖遠耳 Sei Onji』(No.007)縦書版 ■
■ 金魚屋 BOOK Café ■
■ 金魚屋 BOOK SHOP ■
■ 第7回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第07回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 金魚屋の本 ■