寅間心閑(とらま しんかん)さんの連載小説『助平(すけべい)ども』『十一、執着』をアップしましたぁ。実体験をそのまま書いておられるわけではないですが、5分の1くらいは体験したり親しく見聞きしたりしたことだとしても、寅間さんはかなりやんちゃをして来られた方のやうです(笑)。ただそれが糧になるのが文学です。底の底まで見たいという欲求は人間存在に共通だからです。
小説では業界内幕モノがヒットすることがあります。その理由は情報が新鮮だからという面が強い。もちろん違う形で取材してヒット作を連発できれば一番いいんですが、たいていはパターンにはまる。多少業界を変えても似たようなパターンの作品を量産するようになるわけです。面白ければそれでもそこそこ売れるわけですが、文学としてはひととき読者を楽しませて忘れ去られてゆく(次々もっと新鮮な内幕小説が現れてくる)大衆小説です。
純文学作家はパターンにはまらない作家ということです。ただ毎回違う試みをするというのとはちょっと違う。西村賢太さんが典型的ですが、彼は毎回同じような私小説を書いています。しかしそれはパターンではない。思想がありそれに基づく方法があるのです。つまり同じ繰り返しに見えてパターンと方法はぜんぜん違う。前者には思想がなく後者にはある。だから後者にはパターン小説のような決まり切ったオチがない。スリリングなのです。
作家は独自の思想をつかむとうんと強くなります。書くのが楽にもなります。もちろん書いている最中は苦しいですが、朧であれ到達点が見えている。またそれは前回とは微妙に違う到達点なので、作家自身にとってもスリルがある。思想は観念である必要はありません。底の底まで見ること、見極めることで自ずから作家思想は育まれます。
■ 寅間心閑 連載小説『助平(すけべい)ども』『十一、執着』縦書版 ■
■ 寅間心閑 連載小説『助平(すけべい)ども』『十一、執着』横書版 ■
■ 第6、7回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■