大野露井さんの連載小説『新故郷』(第03回)をアップしましたぁ。最初に文学金魚新人賞を受賞した小説『故郷-エル・ポアル-』があり、次に『故郷-エル・ポアル-』の注釈、そして今回の小説『新故郷』です。〝エル・ポアル〟は作家自身による注釈を間に挟んだ2つの作品から構成されます。
改行のない文体ですが、読んでいると「ああなるほど」と思わせるところがありますね。少年が父の故郷だけど、自分にとっては異郷であるエル・ポアルに連れて行かれる。少年の記憶としては鮮明ですね。つまり過去を鮮明な映像として必死に思い出そうとしている。それは一種の墓碑のようなものです。これは主人公を生んだ過去の墓碑銘の記述だと言っていいと思います。改行なんてない、区切りはないのです。それは一連なりになって現在まで続いている。また過去は自分の力で消すことはできない。
日本人は単一民族だというと異論が噴出しますが、島国の単一性が色濃いのは確かです。それを活性化させる要素は意外と少ない。アメリカ映画は派手な対立を作りやすいですが、それはアメリカが人種の坩堝だからでもあります。日本映画でアメリカ的落差を作りだそうとすると在日やヤクザを活用することが多い。しかし今後この落差要素はどんどん増えてゆくでしょうね。日本語で書く以上、ダブルの作家が自らの出自を意識しないはずがない。
ただ問題はそれをどうやって普遍的審級にまで持ち上げてゆくのかということです。異和を保持しながら普遍に達しなければ優れた文学の要件は満たせません。これはダブルで日本国籍の作家にも、日本語で書く外国人作家にも当てはまるでしょうね。21世紀文学にいわゆるフランス・クレオール的文学作品が加わるのはほぼ確実のように思われます。
■ 第06回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
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■ 予測できない天災に備えておきませうね ■