岡野隆さんの『詩誌時評・句誌』『No.083 特集「加藤楸邨」(月刊俳句界 2017年07月号)』をアップしましたぁ。編集部の特集リードには『昭和俳句、戦後俳句、そして現代俳句においてもっとも影響力をもたらしたものは誰であろうか。編集部はその筆頭に楸邨を挙げたい』とありますが、岡野さんは『う~ん、そうなのかなぁ。(中略)楸邨は石田波郷、中村草田男とともに「人間探求派」と呼ばれた。人間探求派は「俳句において人間の内面を追求した俳句運動」だと説明されることが多いが(中略)楸邨、波郷、草田男の俳句の質はかなり違う。また作品だけ読めば、その文学的な高みは草田男、波郷、楸邨の順になる』と書いておられます。
楸邨特集に限りませんが、商業俳句誌で悪口ではなく、批評的乗り越えによって過去の遺産を受け継ごうとするような散文原稿が載ることはまずありません。物故作家はもちろん、現存作家の特集、小特集でもたいていは結社員や仲のいい作家が動員されて、よーするに埒もない褒め言葉が並んでしまいます。俳句の世界にいる人たちはそれが当たり前と思っているのでしょうが、少なくとも伝統文学でも短歌は違う。もそっと気合いの入った原稿がけっこう掲載されます。井戸の中ばっかり覗いていると、そのうち自分の顔しか見えなくなりますよ。
岡野さんは『楸邨俳句の最大の特徴は〝眺め〟にある。熱も思想もなく眺めている。虚無的姿勢だと言えるが、虚無の〝無の底〟に達することはない。(中略)この熱のない眺めの姿勢によって、楸邨は草田男や波郷よりも〝許される人〟になったと思う。(中略)恬淡としてあらゆる現世の栄誉を受け、普通の俳人なら優れた弟子の冷酷な離反と受け取るような独立も平然と許した。そして誰からも愛され、先生先生と仰がれる。不思議な光景である』と批評しておられます。このくらいの読みがないと、何を批評しても誰を批評してもジャーナリズムは盛り上がらないでしょうね。
■ 岡野隆 詩誌時評『句誌』『No.083 特集「加藤楸邨」(月刊俳句界 2017年07月号)』 ■
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