原作・小原眞紀子、作・露津まりいさんの連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第17回)をアップしました。小原、露津さんコンビのサスペンス小説は『お菓子な殺意』で3作目ですから筆力内容ともに安定しております。もちろ金魚屋では単行本化を視野に入れていますが、タイミングとプロデュース方法が大事です。本になるのはもそっと後になると思いますが、そのためにも今年最初の金魚屋単行本は重要です。
年始の2日ほどですが石川もお休みをいただき、またぞろつらつらと今の出版状況について考えました。皆さんの耳には景気のいい話しか入って来ないかもしれませんが、ホントに出版界の現状は厳しいのです。大手だろうと中小だろうと苦戦していることに変わりありません。その最大の理由は、やっぱ現代の情報爆発にあるだろうなぁと思います。
情報革命によって、わたしたちが獲得して処理しなければならない情報量は以前とは比較にならないほど増えています。活字情報だけじゃありません。画像、動画、ゲームも情報の内です。その中でエンタメ、もっと俗に言えば暇つぶしツールとしての読書の地位が下がっていったのは当たり前のことです。今はまだエンタメとして読書する世代層がいますが、ご自身のことを考えればすぐわかるように、今後どんどんそういった層は減っていくはずです。よほど〝読まなければならない〟と思わなければ、人は本を手に取らない時代がやってくると思います。
つまり一昔前のように、いろんなメディアに書き散らした作品を寄せ集めても本は売れない時代になります。もそっと正確に言うと、Aメディアの要請で書かれたA作品、BメディアのB作品etc.を集めて、作家Xと版元Yの都合で出版されるような本は弱いということです。情報の大洪水にさらされている読者は裏読みしますから、なかなか他者の都合で踊ってくれなくなる。つまり読者が〝読まなければならない〟と考えるのは、本質的にはある作者の最良の部分だけ、ということになります。大物作家でも書き散らしを集めた本は苦戦するということです。作家が時間と労力をかけて〝これで勝負〟と打って出た作品しか読者の支持を得られないだろうなと思います。
もちろん石川はここ四半世紀ほどの、じょじょにメディア編集部主導型になっていった出版界の話題作り方法をよく知っています。ただ同じテを使ってもすぐに古びる時代です。初手は100の効果が上がっても次は70、50とだんだん効果が薄れてきます。まだ効果があるうちに抜本的な方法を考えなければ、いずれじり貧になることは目に見えています。
じゃあどうすればいいのか。文学の原理的なところに戻るしかないでしょうね。新人賞であれ連載であれ、メディアの都合に合わせて原稿枚数を区切るのは無意味です。新人であれ既存作家であれ〝とにかくこれで勝負〟という作品を書き、それをできる限り拾い上げるメディアが必要だと思います。今の編集部主導型の話題作りとは逆ですが、メディア編集部も作家も、作品とそれを世の中に普及させること、読まれること、本を売ることに対する認識を変えなければならない時期に差しかかっていると思います。
紙メディアの編集部から見れば、ネットで作品を公開する文学金魚はちょっと頭がおかしいということになるかもしれません。でもまあ石川には勝算があります。そこそこいい作家でも、作家の最良の部分、これで勝負といった強い力が表現された作品など、そうそう出てくるものではありません。じゃあどうすればいいのか。それが出るまで書いてもらうのです。そのためには底なしの表現空間を持ったメディアの方が有利です。
作家にとってもメディアにとっても大変な時代ですが、〝本が出れば終わり〟という時代が完全に終わったのは間違いありません。なぜなら売れなければ、どんな有名版元から本を出しても次の本は出ない。このサイクルはこれからもっと厳しくなります。まだ一部の作家は文壇システムに守られて安穏としていられるところがありあますが、他の産業ジャンルと同様に、作家も間違いなく毎回勝負になります。生き残りたいなら状況を客観的に分析して、既存の死にかかった文学システムからいち早く足抜けした方がいいと石川は思います。
■ 原作・小原眞紀子 作・露津まりい 連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第17回) (縦書)版 ■
■ 原作・小原眞紀子 作・露津まりい 連載サスペンス小説『お菓子な殺意』(第17回) (横書)版 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
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