池田浩さんの文芸誌時評『No.115 小説すばる 2017年12月号』をアップしましたぁ。池田さんも書いておられますが小説すばるは分厚いですねぇ。これは紙媒体雑誌としては絶対的にいいことです。文学出版ビジネスが軌道に乗っているといふことですね。
紙媒体の雑誌を編集していると、分厚い雑誌を出せば売れるんじゃないかと誰もが一回は考えます。文芸誌などの場合、勉強したい、新たな知識を得たいと望んでいる人が雑誌を買うことが多いからです。雑誌が厚いということは情報量が多い、百科全書的に情報を網羅しているという幻想を読者に与えます。だからうまくやるとそこそこ売れる。だけんどそう何度も同じ手は使えないわけでこの手の巨艦大砲主義はすぐに限界が来ます。そういう〝三号厚い雑誌〟に比べると小説すばるはコンスタントに厚いわけで、立派なものです。
池田さんはまた、『この小説すばるの電話帳のごとき厚みは、小説を補完し、それに先立つ世界を前提として全体像を映し出そうという、一種ジャーナル本来のあり方だろうと思えるのだ』と批評しておられます。石川も同感です。中途半端に巻頭カラーグラビアを付けても文芸雑誌が売れる時代ぢゃない。ましてや深刻ぶった文学者像や、かつての文士の幻想を振りまいても臭みが生じてさらに読者がいなくなるだけです。
現代は情報化時代。文字よりも映像・動画の方が遙かに訴求力がある。それを十分に踏まえた上で、文字でなければ表現できない内容を盛り込むのが文学が生き残る道です。しかし単にヴィジュアル要素を取り込むだけでは不十分です。文学業界は他ジャンルの富を取り込む前に業界全体の風通しを良くしなければなりません。今のところ文学は小説、詩、評論etc.と縦割りになっていますが、まずその精神的な垣根を壊し乗り越える文学者が現れなければ他ジャンルの要素を取り入れても一時の新し味で終わると思います。
■ 池田浩 大衆文芸誌時評『No.115 小説すばる 2017年12月号』 ■
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