連載翻訳小説 e.e.カミングズ著/星隆弘訳 『伽藍』(第10回)をアップしました。第3章天路歴程です。カミングズの小説は、殺伐とした叙述に鮮烈な抒情が入り交じるような文体です。こういった文体はアメリカ独自のものでしょうね。極めて現実的で物質的。だけどその下に、弱いとも美しくもろいとも言えるような人間の心が隠れている。
前にちょいと書きましたが、金魚屋では日本にカミングズを本格的に翻訳紹介した、藤富保男さんへのインタビューを考えていたのです。ほんのちょっと遅かった。インタビューをお願いするためにお電話したら奥様が出られ、藤富さんがお亡くなりになられたこと、身内で密葬をすませ、これから発表するのですとおっしゃいました。半年とか一年早くインタビューさせていただいていればと悔やまれます。
文学を巡る状況は刻々と変わっています。自由詩は日本文学ではカナリア的な位置にありますが、良くも悪くも世界の変化の影響を大きく受けたと思います。戦後にほぼ同時発生して一九八〇年代までは大きな影響力を持ち、歌人や俳人ですら眩しいように見上げていた戦後詩と現代詩の影響力が、今では見事なまでに霧散しました。その総括は不十分で自由詩の世界はどうしようもなく低迷していますが、影響力霧散の理由とポスト自由詩のヴィジョンは、戦後詩と現代詩だけを検討していたのでは得られません。
藤富さんは北園克衛のVOU系のモダニスト詩人です。最近の北園さんをやたらに持ち上げる風潮には石川は首をかしげますが、北園さんを含むモダニストたちの影響力が非常に大きかったのは確かだと思います。その機微を肉体感覚で知っておられたのが藤富さんでした。しかしそれを直におうかがいすることはもうできません。藤富さんが残された著作から読み取ってゆくしかないでしょうね。
■ 連載翻訳小説 e.e.カミングズ著/星隆弘訳 『伽藍』(第10回) 縦書版 ■
■ 連載翻訳小説 e.e.カミングズ著/星隆弘訳 『伽藍』(第10回) 横書版 ■
■ 第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項 ■
第05回 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)応募要項です。詳細は以下のイラストをクリックしてご確認ください。
■ 予測できない天災に備えておきませうね ■