鶴山裕司さんの『BOOKレビュー・詩書』『No.027 ねじの回転あるいは前衛俳句の到達点――安井浩司新句集『烏律律』(下編)』をアップしましたぁ。新句集『烏律律』を中心に据えた、鶴山さんの安井浩司論完結篇です。文学に限りませんが、人にはそれぞれ好き嫌いがあります。『この作品好き、嫌い』があるのは当たり前ですが、なぜそうなのかを考え始めると、最初のとっかかりになるのが意味です。こういう意味のことが表現されているから好き、嫌いとなるわけです。ただ文学批評を書く場合、個人の感覚的好き・嫌いを超えた評価軸が必要になります。それが思想や構造と呼ばれるものです。
思想・構造的な評価軸を持てば、作品批評はある程度客観性を得ることができます。もちろんその評価軸が正しいかどうかはまた別の問題です。評価軸が過去文学の基盤にしっかり繋がっており、未来の文学のあるべき姿を示唆していれば、批評家は尊敬されるでしょうね。印象批評レベルを超えたいなら、どこかの時点でじっくり文学やジャンルの原理を考える必要があります。また作家はこの作品好き・嫌いでは済ませられない。長所に頼っているだけではいずれ限界が来る。作家がその能力を高めるには、自分が嫌いなもの、苦手なものを取り込む必要がありあます。
ふすま絵の天山微歩の岳がらす
地中から湧きぜんまいを解く風や
秋夜空浮かぶ月餅追うわらべ
夜陰ふと枝に腸(わた)懸け洗う僧
水底の寺見えるまで望の月
一人生れ千人(ちたり)死すとも真葛原
かもめ未だ海は卵の中に在り
祖父の膝寓話の魚を釣る遊び
山の念仏海の念仏湧くからす
撞く鐘の絶対音に散るかえで
(安井浩司『烏律律』)
鶴山さんは『こういった作品が最も安井俳句らしい。ただ一句一句に作者が全力を込めた深い意味はない。普通の俳句と同様に、言葉が取り合わされて一つの世界が表現されている。(中略)なかなか難しいだろうが、安井俳句はもっと素直に読まれていい』と批評しておられます。じっくりお楽しみください。
■ 鶴山裕司『BOOKレビュー・詩書』『No.027 ねじの回転あるいは前衛俳句の到達点――安井浩司新句集『烏律律』(下編)』■
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