連載文芸評論 鶴山裕司著『夏目漱石論-現代文学の創出』(日本近代文学の言語像Ⅱ)(第17回)をアップしましたぁ。『漱石論』は『日本近代文学の言語像』三部作の中の一冊で、『正岡子規論』、『森鷗外論』といっしょに金魚屋から三冊同時刊行されます。今回は『Ⅳ 写生文小説-『吾輩は猫である』(中編)』です。
鶴山さんが引用しておられますが、『吾輩は猫である』の中で苦沙弥先生が学生時代の友人・天道公平からもらった手紙を、『「頗(すこぶ)る分りにくい」内容だとは思ったが、「わからぬものを難有(ありがた)がる癖を有して居(い)る」ので、公平の文章を何となく「尊敬」する気になっていた』というシーンがあります。
文学青少年ならこういうことは、誰しも若い頃には経験がありますよね。ただ年を重ねてまで、無闇矢鱈にわかりにくい文章類を有り難がっているようではダメです。世の中で一番難しい文章は、わかりにくい、説明しにくい事柄を、できるだけ平明に記述することです。小説でも批評でもエッセイでもそれは変わりません。
もちろん若者特有と言っていい、生硬で難解だけど、とにかく表現したいことがある、言いたいことがあるといった文章は魅力的です。ただそれは一過性のものです。50、60代になってまでそんなことをやっているようでは成熟が足りない。
ただま、漱石先生も若い頃は、「わからぬものを難有(ありがた)がる癖を有して居(い)」たわけで、ちょっと安心するところがありますね(爆)。漱石は難解な思想文学と言われますが、後期になればなるほど、難しいことを、なんとかわかりやすく、平明に書こうとしています。作家は変化していかなければならないということでもあります。
■ 連載文芸評論 鶴山裕司著『夏目漱石論-現代文学の創出』(日本近代文学の言語像Ⅱ)(第17回) 縦書版 ■
■ 連載文芸評論 鶴山裕司著『夏目漱石論-現代文学の創出』(日本近代文学の言語像Ⅱ)(第17回) 横書版 ■
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