連載文芸評論 鶴山裕司著『夏目漱石論-現代文学の創出』(日本近代文学の言語像Ⅱ)(第06回)をアップしましたぁ。『漱石論』は『日本近代文学の言語像』三部作の中の一冊で、『正岡子規論』、『森鷗外論』といっしょに来春金魚屋から三冊同時刊行されます。今回は『第Ⅱ章 漱石小伝』より『英国留学 ―― 孤独な英文学研究』です。
漱石は英国留学中に『漢学に所謂(いわゆる)文学と英語に所謂文学とは到底(とうてい)同定義の下(もと)に一括し得(う)べからざる異種類のものたらざる可からず』という認識に達し、英文学の原理的研究を始めます。こういった原理的探求はとても大切です。その成果である『文学論』は未熟でしたが、鶴山さんは『この研究により、漱石は肉体感覚としてヨーロッパ文学の本質をつかんだ。子規が室町時代から幕末までの俳句を分類するという、ほとんど無謀な『俳句分類』によって俳句の本質を把握したのと同じである。それまで一度も小説を書いたことがなかったのに、『吾輩は猫である』以降、様々なタイプの小説を量産できた基盤は『文学論』研究にある』と書いておられます。
鶴山さんはまた『漱石は後に『私の個人主義』で、『文学論』の仕事を通して「自己本位といふ言葉を自分の手に握(にぎ)つてから大変強くなりました」と語っている。漱石の個人主義は身勝手ではない。自らのヴィジョンに確信が持てるなら、たとえ世間と対立することになっても、それを押し通すべきだということである』とも書いておられます。これは鶴山さん自身の姿勢でもありますね。彼は原理的思考者です。その是非は世間様が判断することになりますが、来年にはその一端を書籍の形で明らかにできると思います。
んでサーバの統計を見ると、金魚屋の年間ページビューは12月30日現在で約160万アクセスです。純文学系Webマガジンとしてはそこそこかもしれませんが、世間一般の人気サイトと比較すればまだまだですね。来年にはサイトのリニューアルも行いますが、最低でも年間1,000万アクセスは目指したいなぁ。
すべての新しいテクノロジーについて言えますが、それは結局は人間が使いこなし、それによって新たな人間の思考を生み出してゆくものです。これは実に素朴な石川の肉体感覚ですが、文学金魚を運営してみて石川はWebマガジンの可能性を確信しました。その残酷なまでのスピード感、物理的制約のない容れ物の大きさ、影に日向に張り巡らされている文学的コードからのほぼ完全なインディペンデント性は、作家はもちろん編集者のメンタリティをも確実に変えます。もちろんまだまだ文学金魚の全体的ストラクチャは未完成ですが、十分文学の世界で新たな発信メディアになり得ると確信しております。
あ、みなさまよいお年を~。
■ 連載文芸評論 鶴山裕司著『夏目漱石論-現代文学の創出』(日本近代文学の言語像Ⅱ)(第06回) 縦書版 ■
■ 連載文芸評論 鶴山裕司著『夏目漱石論-現代文学の創出』(日本近代文学の言語像Ⅱ)(第06回) 横書版 ■
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