第02回 文学金魚奨励賞受賞作 ルイス・キャロル著 星隆弘訳『アリス失踪!』(第12回 最終回)をアップしましたぁ。『アリス失踪!』もいよいよ最終回です。星さんには次回、この翻訳についての覚え書きといふか、後記を書いていただく予定です。
もう『アリス』におなじみのみなさんはご存じのことで、今回通読していただいた方もお気づきになったと思いますが、『アリス』は実に短い物語です。しかしこの短い物語が現在に至るまで、数々の二次創作作品を生んでいるのです。それはやはり、じっくり考えてみるべき事柄でしょうね。
やがて物語が底を尽き
不思議の井戸も枯れてしまえば
くたくたの語り部はあの手この手で
なんとか話を変えねばと
「つづきは次の」「1分後ね!」
きゃっきゃと騒げば逃げ場なし
こうしてひとつずつ実っていった
不思議の国の物語
奇妙奇天烈に仕上げた数々も
これにてめでたく締めくくり
陽気な舟乗りさん、帰りましょう
沈みゆく夕日を頼りに
アリス!子どもっぽいお話だけど
どうか優しく受け取ってちょうだい
そして幼心の夢で編んだ
思い出の帯にしまってちょうだい
まるで遠国で摘んで萎れた
巡礼者の花輪みたいに
(星隆弘訳『アリス失踪!』)
『アリス』の最後は詩になるのですが、この部分は何回読んでも感動的です。石川、詩誌を読むたびに頭に来て、けっこう厳しいことを書いてしまふのですが、その一番の理由は、詩人さんたちにチャレンジ精神が見られないことにあります。チャレンジしているつもりなのでせうが、固定概念に凝り固まっている。
自由詩の詩人は自由なんです。たとえば『アリス』全体を詩だと捉えることもできます。物語と詩は対立するものだとおっしゃる詩人もいらっしゃるかもしれません。でもそんなことはないです。自由詩の歴史は、常に詩と呼ばれる文学概念を打ち壊す作品によって更新されてきました。物語詩を書けば、失敗作なら『物語じゃん』と言われてしまうでせうが、成功作なら詩と呼ばれる芸術の本質が露わになることもある。まだまだ古典に学ぶべき点はたくさんあります。
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