山本俊則さんの美術展時評『No.058 ボッティチェリ展(後編)』をアップしましたぁ。初期ルネッサンス絵画には、ギリシャ・ローマ経由で流入した東方文化の強い影響が見られます。それが当時、非常に強力になっていたカトリック・キリスト教と一種の化学反応を起こし、ルネサンス独自の絵画様式ができあがってゆきます。
日本にはこのようなボッティチェリ絵画に影響を受けた画家が不思議と多い。すぐに有本利夫や瓜南直子の作品が思い浮かぶ。また片山健の初期鉛筆画もそうだ。片山は「ボッティチェリの絵の中の人物の視線が決して交わらない理由がわかった時、絵というものを理解した」と言っている。それは最もヨーロッパ的な絵画の端緒に位置するはずのボッティチェリの絵画に、東洋的聖性が流れ込んでいることを示している。ボッティチェリの代表作『ヴィーナスの誕生』や『春(プリマヴェーラ)』も同じ手法で構成されているが、この二作はギリシャ・ローマ文化をキリスト教文化に習合・昇華した作品である。ギリシャ・ローマ文化が異和を残したままキリスト教的秩序に取り込まれているので、強烈な個性を発揮する部分によって全体が形作られるのである。
(山本俊則)
確かに日本の画家で、西洋とも東洋ともつかない聖人像を描く作家は多いです。ちょっと太めの西洋女性像(イマージュ)に取り憑かれたかのような有本利夫が典型的ですね。有本はルネサンス絵画、それも初期ルネサンス美術の愛好者でした。山本さんはそれをボッティチェリ絵画の視線で説明しておられます。ボッティチェリ絵画では登場人物の視線が交わらないことが多い。後期ルネサンス美術のように、強力なキリスト教的規範(思想)で画面全体が統御されていないのです。日本の画家たちはそれを敏感に感受したと言えます。有本の女性イマージュなどは、汎神論的聖性が現代的個(性)の形を取ったような印象です。
■ 山本俊則 美術展時評『No.058 ボッティチェリ展(後編)』 ■
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