山本俊則さんの美術展時評『No.057 ボッティチェリ展(前編)』をアップしましたぁ。泣く子も黙るボッティチェリ展の批評です。ボッティチェリはイタリア初期ルネサンスの、大画家中の大画家です。現代に近い作家なら茫漠とした印象批評でも通ることがありますが、ボッティチェリくらひ古典作家になるとそーはいかない。時代背景を含めた知識が必要です。またはっきし言って、ルネサンスは日本人にとって遠い世界です。日本人は自分の民俗・国家的感性を手がかりに絵を鑑賞するのも難しい。石川など、ヨーロッパの中世は洗練されてたのねぇと素朴に感心してしまひます(爆)。
イタリア・ルネサンスの期間は意外に短い。初期を代表するボッティチェリは一四四四年頃に生まれ、一五一〇年に没している(享年六十五歳か六十六歳)。盛期ルネサンスの画家で最も長生きしたミケランジェロは一四七五年生まれ、一五六四年没(享年八十九歳)である。この約百年間をおおむね前半と後半に分けて、初期ルネサンスと盛期ルネサンスと呼ぶわけだが、その作風はかなり異なる。簡単に言えば、ボッティチェリの絵はギリシャ・ローマ文化の影響を強く受けていて静的である。それは盛期ルネサンスにも受け継がれるが、ラファエロ、ダ・ヴィンチ、ミケランジェロの作品に描かれているのは明らかに人間である。初期から盛期にかけて、人間の姿をした神々から、神々しいまでに美しい人間が描かれるようになったと言っていいだろう。
(山本俊則)
イタリア・ルネサンスの百年は日本では室町時代後期に当たります。室町末から桃山時代にかけてスペインやポルトガル船が来航して、日本と西洋の接触がわずかながら生じますが、それまでの数百年はほぼ没交渉でした。ある民俗や国家固有の文化は、動乱の時代を経て、外部から遮断されたような時期に成立します。ヨーロッパではルネサンス期がそれに当たります。ルネサンスが近世から現代にかけてのヨーロッパ文化の基盤になっています。
初期ルネサンスの美術家たちが最も影響を受けたのはギリシャ・ローマ文化でした。ギリシャ・ローマ文化がヨーロッパ文化の基盤になっているのは常識ですが、ルネサンス期において、ヨーロッパ人好みのギリシャ・ローマ文化が吸収されたと言ってもいい。わたしたちはヨーロッパ人のフィルターでギリシャ・ローマ文化を理解しているところがあります。山本さんは後半でその仕組みを解き明かしておられます。ルネサンス絵画では『人間の姿をした神々から、神々しいまでに美しい人間が描かれる』ようになるわけですが、それはなぜかといふことでありますぅ。
■ 山本俊則 美術展時評『No.057 ボッティチェリ展(前編)』 ■
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