山際恭子さんのTVドラマ批評『No.126 真夜中の百貨店』をアップしましたぁ。BSジャパンで火曜日夜23:00から放送されているドラマです。声優の大塚明夫さん主演で、山際さんは『ストーリーをともなった通信販売ということである。ちょっと観ると、テレビ東京の番組かと思うが、微妙に違う。(中略)制作者のスタンスの違いなのだが、一方で何事においても人のスタンスというのはある部分を決定的に変化させるものではある』と説明しておられます。では『真夜中の百貨店』独自のスタンスとはどんなものなのでせう。
山際さんは、『『真夜中の百貨店』は(中略)「三越伊勢丹」自体を指す。(中略)最後に「お約束」のテレビショッピング的映像が流れると、ふと考える。私たちの生の時間は(中略)商品を選び、それを手に入れる努力だけで終わっていく。商品情報が人のドラマを食いあらすとはそういう現代を示唆していた。そしてコマーシャルとは、多かれ少なかれ商品に人の物語を消化吸収させるものなのであり、ブランド化とはその物語を共同幻想化するものだ。私たちの物語はいつ、どこで復権するだろうか』と批評しておられます。
BSならではの露骨なまでの物販ドラマなのですが、それをどれだけソフィスティケートして放送できるかは確かに見物です。物と人との関係は単純だとも言えます。要はお金があれば買える。だからブランド品は、購買ターゲット層よりちょっと高めの値段設定になる。10万使える人は無理すりゃ30万の物が買えます。100万の人は300万くらいまでOKでしょうね。無理してでも買ったという満足感を補強するために、物を巡る物語が必要になる。ブランド神話です。
文学金魚では、文学者の経済問題といふか、お金の問題をしょっちゅう取り上げています。なぜかと言うと、お金は絶対だからです。政治から文学に至るまで、理念はいくらでも変えることができます。でもお金はそうはいかない。100万の物を買ったら絶対払わなければならない。払えなければ大変なことになる。石川は文学者の本質は崇高な抽象理念にあると思いますが、それを維持するには最終的にお金による絶対的裏付けを得なければなりません。目を背けちゃダメです。
大金持ちは別ですが、お金の問題で胸が締め付けられるような思いをした人は多いと思います。なぜかと言うと、お金の問題は絶対だからです。小説は現世を描く芸術で、男女と家族と金の問題が三大テーマです。なぜ理念が抜けているのか。お金の問題を中心にして現世の絶対性を裸眼で認識しなければ、理念など空疎なたわごとに過ぎないからです。
■ 山際恭子 TVドラマ批評 『No.126 真夜中の百貨店』 ■
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