山本俊則さんの美術展時評『No.047 特別展 台北國立故宮博物院 神品至宝』をアップしましたぁ。山本さんの文章が的確なので引用すると、『中国人の国家は言うまでもなく中華人民共和国と中華民国である。メイン・チャイナとタイワン・チャイナと呼ぶ方がしっくり来るかもしれない。(中略)いずれも〝正統中国(中華)政府〟を自認している。国際法的な解釈はいろいろあるが、国家間の紛争においてはたいてい力のある方の主張が通る。領土の広さ、人口の多さ、資源の豊富さ、経済・軍事力においてもメイン・チャイナが圧倒的に有利なのは否めないだろう。ただタイワン・チャイナ正統中国政府説の根拠は確かにある。その一つが台北國立故宮博物院の至宝である』ということになります。
この紫禁城宝物の性格は特殊です。山本さんは、『かつてメイン・チャイナの紫禁城に秘蔵されていた宝物は、現在、メイン・チャイナの故宮博物院とタイワン・チャイナの故宮博物院に分蔵されている。「そんなことで」と思われるかもしれないが、この宝物を所有している限り、国際法などの解釈とは関係なく、民族精神の核心としてタイワン・チャイナは正統中国政府を自称する権利がある。中国人にとって故宮秘宝はたんなる古物ではない。国家のアイデンティティに関わるまさに至宝である。(中略)故宮宝物に表れているような国家と物の関係は、世界中を見渡しても中華国家独自のものだろう』と書いておられます。
また山本さんは、『中国文化の大きな特徴に、文化はほぼすべて皇帝と王朝の権力周辺で生まれていることがある。孔子を始め、孟子、老子などの思想家は権力者の側にはべり、皇帝に政道を説くことを夢見た。李白、杜甫などの詩人も同様である。彼らは科挙に合格して中央政界に重きを為すことを夢想したが果たせず、詩の表現に全人生を賭けたのである。中国王朝は広い国土を統治せねばならず、代々過酷なほどの中央集権制度を敷いてきたが、中国ほど文化までもが中央権力に直結している国は少ない。この伝統がどうなるのかは不明だが、中華民族の伝統として、それはある程度まで継承されてゆくのではなかろうか』と批評しておられます。山本さんの文章は単なる美術批評では終わりませんねぇ。じっくりお楽しみください。
■ 山本俊則 美術展時評『No.047 特別展 台北國立故宮博物院 神品至宝』 ■
■ 金魚屋新人賞(辻原登小説奨励賞・文学金魚奨励賞共通)は3月31日〆切です ■
金魚屋では21世紀の文学界を担う新たな才能を求めています。
小説はもちろん短歌・俳句・自由詩などの詩のジャンル、あるいは文芸評論などで、思う存分、新たな世界観、文学観を表現したい意欲的作家の皆様の作品をお待ちしております。