第2回 文学金魚奨励賞受賞作 ルイス・キャロル著 星隆弘訳『アリス失踪!』(第02回)をアップしましたぁ。思い切った翻訳ですねぇ。ただ『不思議の国のアリス』は古典中の古典ですから、このくらひ大胆な翻訳をしなければ現代的問題の提起にはならないと思います。またオリジナル版を読んだ方はお分かりでしょうが、この作品、意外に短いです。それは宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』や漱石の『坊っちゃん』も同じですね。数えてないですが、多分200枚を切ると思います。作家は出版社からの要請もあって長い作品を書くことを強いられる傾向がありますが、考えさせられますね。また『不思議の国のアリス』は二次創作の宝庫でもあります。石川などがまっさきに想い出すのは吉岡実さんの作品でふ。
ドジソン家の姉妹ルイザ マーガレット ヘンリエッタ
緑隂へ走り込む馬 読書をつづける盛装の三人 見よ寝
巻のなかは巻貝三個
*
エリザベス・ハッセー よい名それとも変な名 ロバー・
ハッセー教授の娘 絹のソファーへ横たわって 午後は
母を待つ 母は医者を待つ 夜は父を待つ 母を待つ父
を わたしは待つ 絹を傷つける虎を待つ
*
C・バーカー牧師の娘メイは椅子の上に立っている 靴
のまま この狼藉の恍惚 十二歳になったら飛び降りる
(吉岡実『少女伝説』)
吉岡さんは英文学者の高橋康也さんのキャロル関係の著作から、『少女伝説』といふ連作詩を作ったと聞いたことがあります。引用やオリジナルテキストに基づく二次創作が、21世紀文学の一つの特徴になるのはほぼ間違いないと思います。19世紀から20世紀的な文脈で言うと〝オリジナリティが尽きた〟といふことになるでしょうが、ポスト・モダン文学は、前世紀までの無邪気なオリジナリティ神話を解体・再構築することで、新たな文学を生み出すのだとも言えるでしょうね。吉岡さんは確か、『想像力は死んだ 創造せよ』と書いておられたと思ひますぅ。
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