岡野隆さんの詩誌時評『No.024 月刊俳句界 2015年02月号』をアップしましたぁ。特集『俳句と社会』を取り上げておられます。岡野さんは『平たく言えば敗戦など大きな事件が起こった際に、ほぼリアルタイムで読まれた句のアンソロジーである。・・・俳句はとても短い表現である。詳細な思想等は表現したくてもできない。少ない言葉数で、俳句がどう社会変動を受けとめているのかが特集の読みどころだろう』と書いておられます。
■「敗戦」のパートより■
新しき猿又ほしや百日紅 渡邉白泉
■「復興」のパートより■
更衣鼻たれ餓鬼のよく育つ 石橋秀野
■「砂川闘争」のパートより■
露寒の暁闇かづく雨合羽 藤田湘子
■「メーデー」のパートより■
制帽を正すメーデーの敵視あつめ 榎本冬一郎
■「高度経済成長」のパートより■
賞与使ひ果しぬ雨の枯葎 草間時彦
■「不況」のパートより■
追いたてられ寒月光下ただ歩くのみ 大石太
■「阪神淡路大震災」のパートより■
今死ぬる思いの他者の初音かな 永田耕衣
こういった形で各時代の社会詠が収録されています。岡野さんはこのうち永田耕衣の社会詠について、『戦後俳句で表現されたような、精神的空白が個の強い自我意識へと盛り上がってゆく文学は、短歌でも自由詩でも小説の世界でも見られる。・・・その大きな流れの中から俳句独自の表現を抽出すれば、それはむしろ危機に際して縮退する自我意識だと言えるだろう。すなわち花鳥風月である。・・・根底にあるのは動植物を始めとする世界内存在と人間存在を、等価なものとして表現し得る俳句文学の特徴である』と批評しておられます。
■ 岡野隆 詩誌時評 『No.024 月刊俳句界 2015年02月号』 ■