ラモーナ・ツァラヌさんの『青い目で観る日本伝統芸能』『No.025 敗北者の視点から見た英雄譚―能〈鵺〉』をアップしましたぁ。9月16日に国立能楽堂で行われた宝生流による能『鵺』(ぬえ)を取り上げておられます。シテは佐野登さんです。
『鵺』は世阿弥晩年の作です。ラモーナさんは、『世阿弥は『平家物語』に拠った作品を数多く作っているが、〈鵺〉は他の作品とは少し違う趣を見せている。・・・〈鵺〉の主人公は、偉業を成し遂げて名誉を得た英雄ではない。『平家物語』巻第四に登場する、源頼政に退治された怪物そのものである。・・・悪者で、しかも敗者である鵺を能の主人公にした世阿弥の意図は何だったのだろうか?』と書いておられます。
その理由はコンテンツを読んでじっくりお楽しみいただければと思いますが、能の言葉はけっこう魅力的ですね。『鵺』では古来有名な和泉式部の和歌、『暗きより暗き道にぞ入りぬべき遥かに照らせ山の端の月』が鵺の言葉として引用されます。この和歌の内容はほとんどウェリギリウスの詩だなぁ。ウェリギリウスは古代ローマの詩人で『アエネイス』を書いたことで知られますが、ダンテの『神曲』で主人公を案内する〝師〟として登場します。『神曲』の中で、ウェリギリウスもまた冥界を巡るのでしたぁ。
■ ラモーナ・ツァラヌ 『青い目で観る日本伝統芸能』『No.025 敗北者の視点から見た英雄譚―能〈鵺〉』 ■