世界(異界)を創造する作家、遠藤徹さんの連載小説『贄の王』(第10回)をアップしましたぁ。現在の世界の支配者である璽椰鵡と弦海にいよいよ危機が迫ってきます。古き方々が君臨する世界に、新しき者どもがもたらす変化が押し寄せてきているわけです。
「あなたは、いえわたしたちがやりすぎたということ」「やりすぎた? なるほど、そうかもしれんな。わたしたちというのは、お前と私がということか」(中略)「おわかりでしょうに。古き方々もです。この世を牛耳ってきたものすべてが奢りすぎ昂りすぎたのです」といふ二人の会話に、遠藤さんの世界観が端的に表現されているでせうね。だから弦海は璽椰鵡に「これはですから、ある意味では僥倖なのです」と言うわけです。
その言葉とともに、愉快耶の姿が霞んだ。そして、ゆっくりと消えていった。けれども、最後のひと言を璽椰鵡は信じられぬ思いで幾度も反芻せずにはいられなかった。(中略)
「わが父よ」(中略)
父亡鳥は、いつまでもかしましくわめきつづけ、すべての力をはぎ取られた璽椰鵡は、無人の墓所と化した弦海の占室にひとり腰砕けていた。
と遠藤さんは書いておられます。言葉が観念と直結していますねぇ。遠藤ワールドでは、その世界観から言葉が次々に生成され、観念の影を帯びた実在的存在として立ち現れるやうなところがあります。こういった小説を書く作家は少ないなぁ。遠藤ワールドはぐるぐると渦巻きながら、天上と地上と冥界を往還するのでありますぅ。