小原眞紀子さんの連載小説『はいから平家』(第04回)をアップしましたぁ。鬼門の九州篇は続くのであります。そりにしても、九州の人たちはパワフルだなぁ。み幸と洋彦の2人は、み幸のおばあさんにあちゃこちゃ引き回されて、そのたびにおしゃべりに付き合わされているやうです。ま、おばあさんにしてみれば、便利なタクシーがやってきて、ご無沙汰している友人知人、親戚を回る絶好の機会なんでせうな。接待もしているやうですけど、それも完全におばあさんペースだなぁ(爆)。
洋彦は像の周りを歩き、「モダンアートだな」と言う。
「いや、装飾古墳てだもんな」と祖母は否定する。
ああ、墓守の土地なのだ、地名からも、と洋彦は呟く。
「なんてね、墓守てね」と祖母は訊き返す。
古墳を守る人々の、古来からの特殊な地域にあたる。ただ中世以降、近畿中心の封建制度による身分差別的な意味付けは、幸いにも九州には及ばずと、洋彦は説明する。
「なんてね、特殊てね」と、祖母は声を張り上げた。
「そぎゃんだろたいね、まあ、金の耳飾りやら銅の鏡やら、なんでんかんでん、あっと。そしてな、剣にな、銀でからたっくさん、文字の象眼しちょるとまで出たてだもん」
ほんに特殊か、貴か人の来らしてから、そぎゃんとばみーんな、持って来よらしたろな、と祖母は目を細め、緑の丘がひろがる先を眺めた。
全然話の内容がかみ合っていないのに、自然に会話が流れておりまふ(爆)。でも日常会話って、本当はこういった形のものが多い。それを人工的な小説で再現するのが難しいだけです。小原さん、けっこうなテクニシャンでありまふ。小説では、ちょいと言葉は悪いですが、お馬鹿さんを主人公にするのが難しい。非論理的な思考や行動を描くのもちょ~難しいです。小原さんの作品には、小説をすっきりとまとめない良い意味での夾雑性があります。
不肖・石川は、こういった夾雑物が絡み合って、全体として絵が浮かんでくるやうな作品が良い小説だと思っております。でもま、そりは短期的に見ると少数派の見識になっているかもしれないなぁ。芥川賞系作家のあったまのいい作家先生たちは、しょーもないポスト・モダン小説こそが現代的だと思っておられるやうな節がありまふ。石川はそういった作品はきれいさっぱり消える、読まれなくなると断言してはばからないわけですが、それはもそっと時間が経たないと証明でけんでせうなぁ。
■ 小原眞紀子 連載純文学小説 『はいから平家』(第04回) pdf 版 ■
■ 小原眞紀子 連載純文学小説 『はいから平家』(第04回) テキスト版 ■