ラモーナ・ツァラヌさんの連載エセー『交差する物語』『No.006 故郷とそこから見える風景(上)』をアップしましたぁ。ラモーナさんはルーマニアのスチャヴァ市のご出身ですが、google mapで見ると、モルドバとウクライナ国境に近いですなぁ。ルーマニアって、ブルガリア、セルビア、ハンガリー、ウクライナ、モルドバの5か国と国境を接してるのねん。不肖・石川、多分ですが純血種の日本人なので、「ううっ、大変そう」と思ってしまひます(爆)。ヨーロッパは日本のやうな島国とは比べものにならない大陸ですが、こりだけ国が隣り合っていると、そりゃいろいろ起こるわなぁと素朴に思ってしまふのでありまふ。
今回ラモーナさんは、故郷の風景について書いておられます。ラモーナさんの原風景は山なのですが、『より高い山に登っても満足できないと確信していた。どうにかしてそのパターンを破らなければならないと思っていた。次々に現れる遠い地平線を目指すのではなく、そのパターンをやぶって別の次元にたどり着けばいい。・・・・それで果てしない海の風景が、何かしらの手がかりになるのではないかと思うようになった。自分には分からないあの風景』と書いておられます。
ただそれだけでは済まないのが故郷といふか、原風景の持つ力であります。ラモーナさんはまた、『スチャヴァっ子ならではの、想像の世界を通して現実を探検しようとする傾向が尋常ではないとを知ったのは、ブカレストなどのような大都会に住んでみてからである。・・・スチャヴァ地方生れの人が持つ想像力はあらゆる自由な創造の契機になるが、それは限界にもなり得るのだ。その枠から抜け出さないと、他の人間は何を考えているか、自分たちの生きている世界はどう動いているか分からずに一生過ごしてまう恐れがある』とも書いておられます。
日本人でも同じことが言えますが、故郷は基本的に、たまたま自分が生まれた土地に過ぎません。それを内面化することで初めて故郷という概念(観念)が生じます。ラモーナさんの故郷の内面化は面白いです。ラモーナさんは、『日本に来てよく聞かれるのは、ホームシックにならないかということである。全然なっていない。故郷から離れている気がしないからだ。故郷のことも、そこから見えるあの風景も一緒に日本へ持ってきたのだ。どうにかして破らなければならないあの限界もまた』と書いておられます。
■ ラモーナ・ツァラヌ 連載エセー 『交差する物語』『No.006 故郷とそこから見える風景(上)』 ■