金井純さんの『親御さんのための読書講座』『No.034 思考の整理学 外山滋比古著』をアップしましたぁ。外山さんの『思考の整理学』は、けっこうお受験問題になることが多いやうです。一種のハウツー本なのですが、金井さんは『腑に落ちるところは多分にある。それは存外に「整理学」といったハウツー的な部分ではなくて、生活上の実感にちかいところ、肉体感覚に訴える箇所である』と書いておられます。
その一例として、金井さんは『人間にとっては朝が黄金期なのだ、ということ』を挙げておられます。『「朝」とは・・・「眠って起きた直後」ということだ。年配者は疲労しやすく、活動は長時間は続かない。・・・短く眠って爽やかに目覚めた後のしばらくの時間が貴重なのだ。・・・パワーがあるうちは、ノウハウなんぞ目に入らない。・・・年配者の感慨なども交えながら書かれている本書は、東大や京大などの学生に、代々読み継がれているという。若いくせに、そんな年寄りの言うことに納得してしまう老成ぶりが嫌だとも言えるし、それが優秀さだと言うこともできよう』と書いておられます。
ハウツーと優秀さの関係ってある程度までは学習です。受験でも就職試験でも同じですが、それは優秀な人材を選ぶのと同時に、効率良く候補者を絞り込むための試験です。当然、なにをもって落第(落選)するのかといふ情報を持っていた方が有利です。本当に優秀ならどんな試験でもパスするでしょうが、さういふ人は一握りです。横並び集団から一歩抜け出すためには、自分でプラスアルファの優秀さを作り上げなければならない。外山さんの『思考の整理学』が東大生や京大生に人気の理由でせうね。
こういったハウツーは、もちろん文学の世界にも当てはまります。作家のエセーなどには時々、『生活上の実感にちかい』『肉体感覚に訴える』執筆ノウハウが書かれていたりします。不肖・石川は、作家のハウツーといふか方法論は、経験則だけではなく、もそっと厳密に探究した方が効率が良いと思いますが、実践的ノウハウはやはり参考になります。ただし、できるだけ優秀な作家のノウハウを盗むことですね。
ノウハウ本は一種の教科書ですから、読んでいてそんなに面白いものではありません。文学の場合、たとえ自分のタイプではない作家であろうと、長い年月の間に優秀だと多くの人たちから認められている作家の本を読み、その優秀さの理由を探ることもノウハウになります。すべての読書体験を、好き嫌いで済ませていたのではノウハウにならんのでありまふ。
■ 金井純 『親御さんのための読書講座』『No.034 思考の整理学 外山滋比古著』 ■