金井純さんのBOOKレビュー『絵のある本のはなし』『No.026 スイミー レオ・レオニ著』をアップしましたぁ。ご存知レオ・レオニの名著『スイミー』を取り上げておられます。レオニはオランダ生まれで裕福なユダヤ人家庭に育ちましたが、第二次世界大戦のドイツ・イタリアによるユダヤ人迫害を逃れてアメリカに亡命しました。1910年生まれですが、初めて絵本を書いたのは59年、49歳の時です。孫のために作った絵本『あおくんときいろちゃん』が絵本作家デビュー作になりました。昨年、東京渋谷のBUNKAMURAで回顧展が開かれたのも記憶に新しいところです。
金井さんは、『「スイミー」のストーリーは、「みにくいあひるの子」などによく見られるものだ。赤い小さな魚たちの中で、スイミーだけが黒い。他の魚たちとは違うためにいじめられ、爪弾きされるが、それゆえに思慮深く鍛えられる。大きな魚に襲われ、散り散りに逃げまどう小さな魚たちを集め、大きな赤い魚に見せかける。その中心として、スイミーが黒い目玉になるのだ』とレジュメしておられます。スイミーは特権的存在ですが、その特権はスーパーヒーロー・ヒロインのものではないわけです。レオニの絵も独特です。主人公のスイミーにフォーカスすることがない。スイミーは世界の中の一匹であり、仲間といっしょなのです。
その理由を金井さんは、『この美しい絵本は、かわいらしく賢いスイミーの見ている世界でなくてはなるまい。かわいらしく賢いのは、この絵本を読み聞かせられ、この絵を眺める子供でなくてはならないからだ。スイミーの目に、自身を取り巻く環境、自身を無視し、やがては自分が導くことになる仲間たちは存在感の薄いものだろうし、そうでなくてはならない。スイミーはそれに押しつぶされることなく、それらをコントロールする立場になるのだから』と批評しておられます。的確でシャープな批評ですね。レオニの絵本が独自の魅力を放ち、今なお子供たちを惹き付けている理由がおわかりになると思います。
■ 金井純 BOOKレビュー 『絵のある本のはなし』『No.026 スイミー レオ・レオニ著』 ■