菜穂実さんのジェットコースター小説『ケータイ小説!』(第31回)をアップしましたぁ。物語も終盤に差しかかって、じょじょに謎が明らかになっていきますね。ケータイ小説といっても菜穂実さんの作品は、きっちりとしたサスペンス小説なんだな。宙づり状態が長く続けば続くほどサスペンス小説は盛り上がります。またその落としどころも問われるようになる。菜穂実さんはかなりのテクニシャンだと思いますので、期待を裏切らない結末が待っていると思いますぅ。
ほんでちょいと前に、新潮社さんがラノベに進出するといふニュースが流れました。出版不況は相変わらず深刻ですが、その中でもラノベが相対的に大きなパイになってきたといふことであります。石川がちょこちょこリサーチしている感触でも、少なくとも純文学よりもラノベの作家志望の方の方が多いようです。また現在文学出版は、純粋に読書を楽しむ層だけでなく、作家志望の文学青年・少女を読者に取り込もうと動いています。不肖・石川はこの戦略にはけっこう疑問で、作家志望の方が本をよく読むといふのは幻想だと思ったりもするのですが、まあそういうトレンドになっておりますです、はい(爆)。
ただま、こういっちゃーおしめぇよといふ言い方になってしまひますが、小説は売れるときは売れるのでござる。編集後記で何度か書いていますが、小説文学は本質的に俗なものです。詩や哲学のような高尚な観念を書くだけでは済まない。色恋と金が二大テーマであり、人間が絶対に超克できない現世的矛盾を描くのが小説文学といふものであります。
ですから小説は本質的に売れなくては面白くない。出版社にとってはもちろん、作家にとってもそうなのです。俗なテーマはいくらでもありますが、その切り口の斬新さや、現代社会への食い込み方が優れている場合にある程度の出版部数を獲得できる。多くの人の共感を得られる俗を描くからこそ、社会(大衆)を巻き込んである程度売れなければ、小説文学は面白くないのであります。
ほんでラノベの世界は数々のベストセラー本を輩出していますが、いわゆる芥川賞・直木賞といった〝大文字の文学〟の世界からはたいてい無視され続けておりますね。しかしこのトレンドもいずれ変わるでしょうな。できればラノベ作家さんたちには、有無を言わせぬ売り部数高で大文字の文学の世界を変えていただきたひものだと思いますですぅ。