長岡しおりさんの文芸誌時評『No.009 小説新潮 2013年12月号』をアップしましたぁ。特集は『恋人たちの聖地』です。『恋人たちの聖地』とは、特定非営利活動法人地域活性化支援センターのプロジェクトで選定されたデートスポットだそうです。その中から7箇所を選び、7人の作家が短篇小説を書いておられます。
こういふ企画、大衆小説誌ではけっこうあります。作品を書くといふヒモツキではありますが、半分は作家の取材とインスピレーションの幅を拡げるため、半分は作家の接待のためといふ感じの企画です(爆)。もちろんこのような企画で選ばれるのは、どんなテーマでも作品を書くことができ、かつ売れる作品を書くことができる流行作家さんたちであります。純文学作家も出版社もちで取材に出かけたり、資料を買ってもらうことはありますが、流行作家ほど厚遇ではないですね。
文学金魚って、どーも作家の卵さんの夢をこわしているところがあるやうです。文芸誌の新人賞や芥川賞を受賞すれば作家として食べていけるとか、プロの作家になれば、すぐに出版社からお金をもらって自由な取材などができるとか、そふいった夢は幻想であると暴いているやうなところがあるみたい。まあ実際、幻想なんですが(爆)。ただ概念としてであれ、現実の厳しさを予想しておくことは大事だと思います。また文学金魚は古い夢をこわしてしまうかもしれませんが、新しい夢を提示しているつもりです。
文学は結局は作家次第です。編集部がいくらあがいても、今の不透明な文学状況を変えることはできません。少なくとも純文学作家に関しては、編集部が作家を育てるといふのは限りなく幻想に近い。ですから文学金魚編集部の一番大事な仕事は、優れたヴィジョンを持った作家を発掘していくことです。そういった作家を全力でサポートします。自らの文学ヴィジョンをストレートに世の中に問いたい作家にとって、文学金魚は仕事をしやすい場だと思います。
■ 長岡しおり 文芸誌時評 『No.009 小説新潮 2013年12月号』 ■