連載映画批評、玉田健太さんの 『映画金魚 No.004 クロワッサンで朝食を』 をアップしましたぁ。主演はジャンヌ・モローさんです。『死刑台のエレベーター』や『雨のしのび逢い』、『鬼火』 など 60 年代フランス映画を代表する女優さんです。ルイス・ブニュエル監督の 『小間使の日記』 も不肖・石川の記憶に残っています。モローさんは 1928 年生まれですから、この映画が撮られた 2012 年には 84 歳といふことになります。まじっすかといふ感じですねぇ (笑)。フランスの女優さんはうまく年をおとりになる。
監督はイルマル・ラーグさんで、エストニア人です。『クロワッサンで朝食を』 は二本目の作品のようですが、世界に配給される作品としては処女作といふことになります。『クロワッサンで朝食を』 はパリに出てきたエストニア人家政婦が主人公ですが、彼自身のバックグラウンドを最大限に活用した作品になっているようです。国境があり、人種や言葉の違いが手の届くところにあるヨーロッパでは、こんなささいな出来事が映画になるんだなぁとつくづく思いしらされます。
原題は 『パリのエストニア人』 ですが、邦題はどうもヘプバーンを意識したやうですね。エッフェル塔の前で主人公がクロワッサンを食べるシーンがあります。もちろん 『ティファニーで朝食を』 とは質が違います。玉田さんは 『エッフェル塔を前にクロワッサンを食べるという、ありきたりな組み合わせのようにも思えるこのシーンのもつ美しさと力強さを目にした時、パリがアンヌにとって出稼ぎの場でも夢の世界でもなく、住みかとなる瞬間を観客は目にすることになるだろう』 と書いておられます。
観光案内的要素も取り混ぜながら、パリに住むさまざまな人たちの生活を描く小粋な作品といったところでしょうか。うまいもんだなぁ。あ、ポスターはキャリングケースを引きずりながら歩くジャンヌ・モローの写真ですが、歩き方には民族の違いがはっきり出ますよねぇ。これはヨーロッパ女性の歩き方です。どこか高貴で孤独な感じ。素敵ですぅ(笑)。
■連載映画批評 玉田健太 『映画金魚 No.004 クロワッサンで朝食を』 ■