文学金魚新人賞佳作 短編小説『先生よりまともな猫/コラージュ』酒井聡 をアップしましたぁ。酒井さんは短編をいろいろ書かれていて、今回はその中で日本の純文学を意識した2篇を掲載しました。パロディってほどの臭みはなくて、リスペクトに近いものですけんど。
同じ「引用」でも、そのときの心持ちがそこはかとなく読者には伝わって、パロディだとかリスペクトだとかって自然と仕分けされるんですねえ。酒井さんは現代の申し子みたいな作家で、あえて言うと若手の起業家でもあります。なんでわざわざ言うかというと、そんなすべてがご本人にとっての「表現」であるらしいからであります。
新人の「純文学」という概念へのこだわりは、たいていは文学的アトモスフィアへの無邪気な憧れに過ぎないんですが、酒井さんの場合、そこに無意識的な批判精神があります。意識的な批判なら、小賢しくなりがちなパロディになるんですけんど、そしてまたそれでデビューした若者たちもいろいろ思い出すんですけんど、酒井さんの批判はむしろ自分自身に向いているところに価値がある。意外と自分を相対化できてる。これこそ実ビジネスで揉まれてきた成果なんでしょうね。甘いだけの文学青年ではない。
で、この自身の相対化はいわゆる「私小説」そのものなんで、それが日本の「純文学」と呼ばれる特殊ジャンルの本質であります。たぶん無意識的にそこに行き当たった酒井さんは、センスがあるのでありますう〜。
■文学金魚新人賞佳作 短編小説『先生よりまともな猫/コラージュ』酒井聡 縦書版■
■文学金魚新人賞佳作 短編小説『先生よりまともな猫/コラージュ』酒井聡 横書版■
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